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第39話
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チャイムが鳴って数分間、時間が止まっていた。
少し離れた場所からでも見てとれる。
寺島が、真剣な目で雅実を見ていることが。
方や、雅実は固まったまま。
寺島の行為によってなのか、真剣な眼差しによってなのか。
ただ、固まったまま。
――ザワザワ……――
廊下が賑わいだした。
すると、雅実のクラスメイト数人が保健室に入ってきた。
「まさみん、大丈夫?」
「ごめん、俺が変なところに投げたから」
「動かせる?」
次々とクラスメイトに話しかけられ、固まっていた雅実は、我に帰ってワタワタと慌てる。
雅実を取り囲むクラスメイト。
そのどさくさに紛れて、寺島は、雅実に何も言わずに保健室を出ていった。
残され雅実は、それに気付かずクラスメイトの返答に対応している。
雅実は寺島が好き。
寺島も雅実が好き。
じゃあ、さっきのは?
何の前触れもなく起こった出来事。
雅実と同じ、俺も固まったまま。
こんなときにはシンクロするんだな、俺たち。
二人は、好きな者同士。"恋愛"的意味で。
けど、お互いそれを知らない。
もしかしたら、雅実は自分の気持ちにすら気づいてないかもしれない。
だって男同士。
そう簡単に"恋愛"という気持ちに結びつかないだろ?
肩を組むことはあっても、手を繋ぐことはない。
ときめくことはあっても、熱に変わることはない。
触れ合うことはあっても、溶け合うことはない。
好き同士だけど、男同士。
だから、だろうか?
どこかで思ってた。
男同士に偏見はない。
けど、男同士だ。
親友の域を出ない。
"爽やかな青春の延長"
そんな気持ちで二人を見てた。
でも、さっきの寺島を見て、それが大間違いだと思い知らされた。
それが偏見だと。
ただ触れただけ。
ただ触れただけなのに、その意味が凄く大きくて。
ただ見てるだけ。
ただ見てるだけなのに、二人の関係は変わって。
雅実と寺島は、完全に友達じゃなくなった。
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