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第42話
「しつれしまーす」
「おー、佐々木弟。どうした?」
「鈴木センセー、今日雅実お休みです」
朝の職員室。
雅実の担任・鈴木センセーに、本日雅実がお休みの旨を伝える。
「雅実が休み?」
「ハイ。朝起きたら熱が8度7分も出てて」
「そうか。手の怪我といい、悪いことは続くな」
「ですね」
「分かった。連絡ありがと」
「じゃあ、失礼します」
俺は、職員室を出て自分のクラスへ向かう。
そう、今朝、雅実は熱を出した。
久しぶりの熱。たぶん知恵熱。
俺がストレスで頭痛になるのと同じで、雅実はストレスで熱を出す。
遠足や運動会があると必ず熱を出してた。
でも、それは子どもの頃の話。
中学にあがって以降、雅実は熱を出すことはなかった。
「やっぱり……」
保健室の一件が原因か。
本人は、"手の怪我で字が上手く書けなくて期末の点が心配で"と言っていたが、それならテスト期間中に熱出してたろ。
たぶん、期末テストが終わって、寺島と向き合わないといけないと思ったから、そのストレスで熱が出たんだ。
真面目な雅実だから、色々考えてパンクしたんだろうな。
「おはよう、雅人」
「あ、おはよう、ももチャン」
クラスに着くと、丁度ももチャンも着いたところだった。
「今日は、早いね」
「うん、朝、雅実が熱出してさ。今日は母さんに叩き起こされた」
「え、雅実君熱出したの?大丈夫?」
驚きながら席に着くももチャン。
俺も自分の席に着く。
「うん。本人も、熱の怠さで動けないだけだから寝れば大丈夫って言ってた」
「そっか……」
「……」
きっと、ももチャンは、雅実と寺島に何かあった事に気づいたと思う。
「でも、明日、明後日は土日だし、今日を入れれば3日間休みだから、雅実君もゆっくりできるわね」
「うん、そうだね」
「あーそれにしても、今日からテスト返ってくるのかー。嫌だなー」
「だねー」
それから1日、雅実と寺島の件と、それに伴う気もそぞろで受けた期末テストの散々な結果で、俺の気分が上がることはなかった。
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