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第43話
「じゃあね、雅人。雅実君にもお大事にって伝えて」
「うん、じゃあね、ももチャン」
気分が絶賛低空飛行中な俺。
ももチャンにさよならを言い、帰り支度をしていると、
「マサトクーーーン!」
広瀬が手を振りながら教室に入ってきた。
だから、そのイントネーションは何なんだ!?
残っているクラスメイトがクスクスしてるだろーが!!
「よかった、まだ帰ってなくて」
「ったく……。どうした、広瀬。何か用か?」
「コレ、今日の俺のクラスの授業プリント。まさみんに渡してください!」
笑顔でポンっと数枚のプリントを渡してきた広瀬。
「うげぇー、もう課題出てんの」
「"うげぇー"でしょ!マジ、数学の佐藤鬼畜だから!」
広瀬から渡されたプリントを見て、他クラスとはいえ、うんざりした。
「でも、まさみん日頃の行いが良いから、佐藤も"無理してやらなくていいからな"って。逆に俺なんて、"ちゃんとしないと追加で課題出すぞ"とか言われてさー……」
いつの間にか、佐藤に対する愚痴に変わってブーブー言っている広瀬。
「あのさ、広瀬…」
そんな広瀬の愚痴を遮って、気になっていることを聞いてみる。
「今日、寺島ってどうだった?」
「え、どうだったって?」
"何のことだ?"って顔でこっちを見る広瀬。
「あー…、雅実が休みだったからさ。アイツいつも雅実といるんだろ?だから、今日はどんな感じだったのかなーっと思って」
広瀬は腕を組んで、いかにも思い出すように右上を見上げた。
「んー、フツーだったよ。特に変わった感じはなかった…、と思うけど?」
「……そーかー」
「あ、でも!」
広瀬は思い出したのか、ポンっと手を叩いた。
「そのプリント、何故か俺に託した!」
「ん?」
「最初、寺島がまさみんの机にあったプリント集めてたから、てっきり寺島が持ってくかと思ったら、俺に"これ雅人に渡してきてくれるか"って言ってきてさ。で、俺が持ってきたのよ!いつもの寺島だったら、自分からまさみん家まで持ってきそうなのにね?」
やっぱり、"んー"と考えながら不思議そうな顔で答えた広瀬。
寺島の奴……
「……避けてるな」
「え、何か言った?」
「あ、いやなんでも!」
「じゃあ、マサトクン、よろしくね!まさみんにも、早く良くなぁーれって伝えてて!」
思わず口に出てしまったが、広瀬は気にすることなく"バイバーイ"と言って帰っていった。
教室を見回すと、ほとんどのクラスメイトが帰っていた。
「俺も帰るか」
プリントもあるし、雅実と一回ちゃんと話さないといけないなと思いながら、家路についた。
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