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第53話
……先に、寺島が告った。
さっきまで暗がりでよく見えなかった二人の顔が、窓から差し込んできた微かな日差しに照らされる。
驚く雅実と真剣な寺島。
"あの時"と同じ光景を見ているようだ。
ただ違うのは、
「"友達"としてではなくて……、俺は、あなたのことが大好きです。あなたに恋してます」
寺島の、ド直球の告白。
よく"見てるこっちが恥ずかしくなる"とか言うけど、そんなことない。
真剣に、真摯に、愛の告白をする寺島。
やっぱり、お前カッコいいよ。
逆に、不意打ちを食らった雅実は動揺を隠せない。
口をアウアウさせ、声にならない声を発している。
そんな雅実を見て、少し顔を緩めた寺島。
「それより先に、謝らないとだな。この間は、ゴメン。突然キスして」
この一言に隣の空気が一瞬にして変わった。
ゆっくりと目玉だけ横に動かす。
こっちを向いてるももチャン。
うん、口パクでもはっきり分かる。
《き・い・て・な・い・け・ど?!》
そりゃそうです。
だって言ってないもん。
動けないので、行儀が悪いけど、顎でクイクイと雅実たちの方を指す。
この後が怖いが、とりあえず今物音を出すわけにはいかない。
ももチャンは、渋々顔を元の位置に戻す。
「本当は、すぐに謝ろうと思ってた。けど、期末もあったから、とりあえず期末が終わってから、それから謝ろう、金曜に謝ろうって思ってた」
俺も雅実と寺島に視線を戻す。
「そしたら、金曜に雅実が熱出して休みで……。俺のことで悩んだんだろ?ホント、ごめん」
そう言って頭を深々と下げた寺島。
そして、ゆっくり頭を上げる。
「突然キスしたことは謝る。雅実を悩ませたことも謝る。けど、俺の気持ちは変わらない。それに……」
頭を上げたときには、また真剣な顔に戻っていた。
「きっかけはどうあれ、雅実には自分の気持ちを伝えようと思ってた。雅実なら、俺の気持ちを聞いても、……嫌だったとしても、ちゃんと答えてくれると思ったから。雅実は優しいから言いにくいかもしれないけど、友達でいるのも難しかったら、もう」
「ちょ、ちょっと待って!」
今度は、雅実が寺島を止めた。
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