53 / 77

第53話

……先に、寺島が告った。 さっきまで暗がりでよく見えなかった二人の顔が、窓から差し込んできた微かな日差しに照らされる。 驚く雅実と真剣な寺島。 "あの時"と同じ光景を見ているようだ。 ただ違うのは、 「"友達"としてではなくて……、俺は、あなたのことが大好きです。あなたに恋してます」 寺島の、ド直球の告白。 よく"見てるこっちが恥ずかしくなる"とか言うけど、そんなことない。 真剣に、真摯に、愛の告白をする寺島。 やっぱり、お前カッコいいよ。 逆に、不意打ちを食らった雅実は動揺を隠せない。 口をアウアウさせ、声にならない声を発している。 そんな雅実を見て、少し顔を緩めた寺島。 「それより先に、謝らないとだな。この間は、ゴメン。突然キスして」 この一言に隣の空気が一瞬にして変わった。 ゆっくりと目玉だけ横に動かす。 こっちを向いてるももチャン。 うん、口パクでもはっきり分かる。 《き・い・て・な・い・け・ど?!》 そりゃそうです。 だって言ってないもん。 動けないので、行儀が悪いけど、顎でクイクイと雅実たちの方を指す。 この後が怖いが、とりあえず今物音を出すわけにはいかない。 ももチャンは、渋々顔を元の位置に戻す。 「本当は、すぐに謝ろうと思ってた。けど、期末もあったから、とりあえず期末が終わってから、それから謝ろう、金曜に謝ろうって思ってた」 俺も雅実と寺島に視線を戻す。 「そしたら、金曜に雅実が熱出して休みで……。俺のことで悩んだんだろ?ホント、ごめん」 そう言って頭を深々と下げた寺島。 そして、ゆっくり頭を上げる。 「突然キスしたことは謝る。雅実を悩ませたことも謝る。けど、俺の気持ちは変わらない。それに……」 頭を上げたときには、また真剣な顔に戻っていた。 「きっかけはどうあれ、雅実には自分の気持ちを伝えようと思ってた。雅実なら、俺の気持ちを聞いても、……嫌だったとしても、ちゃんと答えてくれると思ったから。雅実は優しいから言いにくいかもしれないけど、友達でいるのも難しかったら、もう」 「ちょ、ちょっと待って!」 今度は、雅実が寺島を止めた。

ともだちにシェアしよう!