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第54話
雅実の顔が真剣なものに変わった。
俺も、ぐっと拳を握る。
「て、寺島……俺の、話を聞いてくれ」
雅実は目を閉じ、分かりやすい深呼吸を数回。
頑張れ、雅実!
慌てるな。
ゆっくりでいいんだ。
自分のペースでいいんだ。
ちゃんと、今の自分の気持ちを伝えろ!
「あ、あの日…」
雅実の声は、少し震えていた。
「寺島に、き、キスされた日から、悩んだ……」
緊張に耐えきれず、少し俯た雅実を、ジッと見る寺島。
「悩んで悩んで悩んで悩んで……熱が出るくらい悩んだ」
「…うん、ごめん」
そして、雅実はしばらく沈黙した。
雅実の、次の言葉をじっと待つ寺島。
「それで…思ったんだ……」
寺島がゴクリと唾を飲んだ。
「俺は、寺島と友達になりたくないって……」
「……」
「……」
「……そ、っか」
乾いた笑いをして俯く寺島。
違うだろ雅実!
そんな言い方だったら寺島、勘違…
「俺も、寺島と一緒なんだ」
「…え」
お互いがゆっくり顔を上げる。
俯いていた二人が、しっかり見つめ合った。
「俺も……たぶん、寺島に恋してる」
やっぱり震える声だったけど、雅実は、ちゃんと、今の自分の気持ちを伝えた。
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