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第60話
「まぁ、でも……全部見てたってことは、俺の告白も聞いてたんだよな?」
「……ああ」
ぽりぽりと頭を掻く寺島は、
「二人とも、雅実が俺のこと、その……そういう意味での好きってことは知ってたのか?」
目線を彷徨わせながら聞いてきた。
「いや、俺だけ」
そう答えると、寺島の目線が俺と合う。
「いつから知ってた?」
「金曜の夜。雅実から相談された」
「相談……」
目線を落としぼそりと呟いた寺島に、なんとなくイラっとした。
「ああ。"寺島にキスされた""どうすればいい"って」
「……」
俺の言葉を聞いて、眉間にシワを寄せ、口を真一文字にした寺島。
「さっき、本人も言ってたけど、雅実、すげー悩んでた、苦しんでた」
分かってる。
寺島も苦しんでたのは分かってる。
「お前が好きだってことを、自覚するのも、俺に言うのも、すげー躊躇 ってた。不安で……アイツ泣いたんだ」
それでも、まっすぐ雅実に告った寺島。
だから俺も……
「雅実の弟として、はっきり言う」
スーーーっと思いっきり息を吸って…
「雅実に突然キスして、悩ませて、苦しめて、泣かせた、お前のことは許せねー!!」
一瞬、驚いた寺島。
「けど、さっきの告白……お前の、雅実に対する真剣さは伝わった。……それに、俺の大好きな雅美が"好き"って言った奴だ……認める…しかねー…だろ…」
そっぽを向いて、最後の方はごにょごにょと濁す、俺。
だってさー、なんかさー、やっぱさー、悔しいもん!!寂しいもん!!
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
「…ありがとう、雅人」
優しく笑った寺島。
そんな顔見せられたら……、何も言えねーじゃん。
「も、もし、また雅実を泣かせてみろ!お前が凄腕剣士だろうと、ボコボコにするからな!!」
それでも一応、言ってみる。
お前が、もっといけすかねーヤローだったら、ガンガン言うのに。
「そんなこと、もう一生ねーよ」
クスリと笑った寺島。
ナンダ、その余裕な笑みは?!
雅実に好きだと言われて、自信ついちゃった系かぁ?アァ?!
何が"一生"だ!!
何が………ん?
ちょ、ちょっと待て!?
"一生"って、ど、どういうコトだ??
俺が頭の中でプチパニックを起こしていると、
「寺島君、私のこと忘れてるみたいだけど、もし雅実君を悲しませるようなことしたら、私も、アナタのこと、許さないからネ?」
横から、ももチャンが笑顔で釘を刺してきた。
「う、うん…」
ちょっと怯 んだ寺島。
俺の言葉なんかより、もも様のお言葉の方が、効果テキメン☆のようだった。
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