73 / 77

ドキッと?!夏祭り 第5話

「あの…ももちゃん…」 俺達の写真を撮り終え、写りのチェックをしているももチャンを、アリサちゃんが伺うように見る。 そして、意を決したようにこう言った。 「ももちゃんは、……アキちゃんの彼女さんじゃないですよね?」 「「「「!?」」」」 みんな一斉にアリサちゃんを見る。 そりゃそうだ、何を突然!! どうした、アリサちゃん!? 「アリサちゃん、ももチャンは俺の彼女だよ!」 俺は、なんとか笑顔を作って、アリサちゃんに話しかける。 「え!?そうなんですか!!あ、ごめんなさい、雅人くん!!」 「ううん、いいよいいよ!気にしないで!でも、何でそう思ったの?」 ペコペコ頭を下げるアリサちゃんを止めて、当然の疑問を聞いてみた。 「その、アキちゃん、出掛ける前まで、ずっと鏡見てて。てっきりデートかと思って…。それで、聞いたら待ち合わせ場所も駅で一緒だったんで、"彼女はどんな人だろ〜"と思って、私ついてきたんです…」 申し訳なさそうに言うアリサちゃん。 チラリと雅実を見ると、少しだけ、ほんの少しだけ、悲しそうに笑って、"そっかそっか"と相槌を打っていた。 もちろん、そんな些細な変化に気付かないアリサちゃんは、 「でも、そうですよね!ももチャンみたいな美人さんの彼氏が、アキちゃんって…ないないないないっ!!イケメンの雅人くんがピッタリ!」 俺のフォローをする。 「オイ、アリサ。お前もかっ!」 寺島は、冗談めいた感じでアリサちゃん軽く睨む。 「だってー!アキチャンは、どっちかって言うと…雰囲気イケメンじゃん!あぁ〜だからかぁ〜。身だしなみ整えないと、本物のイケメンには敵わないもんねぇ〜!」 「お・ま・え・は〜〜!」 「アキちゃん、ごめーん!」 仲の良い兄妹は、どこの家も同じ様で。 俺達もつられて笑った。 「あ、マイマイたちだ!!」 寺島とじゃれ合っていたアリサちゃんだったが、待ち合わせをしていた友達を見つけたようだ。 改札付近を見て、手を振る。 「じゃ、アキちゃん、私行くね!皆さん、兄のお守りよろしくお願いします!」 すっかり元気になったアリサちゃんは、しっかりお辞儀をして、改札の方へ足を向ける。 「アリサ!ちゃんとみんなと一緒に行動しろよ!あと、時間通り帰れよ!」 「はーーーいっ!」 振り返ったアリサちゃんは、最後に大きく手を振って友達の所へ行った。 アリサちゃんが去って、ワンテンポ。 俺達は、周囲の賑やかさとかけ離れた、何とも言えない空気の中にいた。 「三人とも、アリサが色々ごめん」 その空気を破ったのは寺島だった。 俺は、たぶんももチャンも、アリサちゃんの言葉、気にしてない。 逆に、イケメンって言われて嬉しいぐらいだったし。 けど……。 寺島のひと言に、俺は思わず雅実を見る。 「いいよ、寺島。アリアちゃんは知らないんだし」 いつものように笑う雅実。 「…うん」 寺島は、気まずそうだが笑って頷いた。 「それより、寺島!出かけるまで鏡とにらめっことか、どんだけだよ!寺島って、案外ナルシスト?」 雅実はポンっと寺島の背中を叩くと、 「さ、行こう!あー、何食べようかなぁー!」 と何事もなかったかのように、軽い足取りで歩きだした。

ともだちにシェアしよう!