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ドキッと!?夏祭り 第8話
花火の打ち上げまであと5分ほど。
「ベンチの背もたれ邪魔ね…。良いとこが見えないわ…」
ももチャンと茂みに隠れて10分ほど。
ここから花火を見るのだろうか…。
確かに、人もまばらで、周りも暗いから、ゆっくり綺麗な花火が見れそうだけど…、いかんせん茂みの中。
そして、割とこの体勢はキツい!
俺も、雅実達みたいに、ももチャンとベンチに座って花火見たいなぁ…。
そんなことを考えていると、
「雅人」
目線は二人にロックオンのまま、俺に声をかけてきたももチャン。
「雅人は、二人のこの関係に偏見とかなかったの」
「へ、偏見?」
突然の質問に戸惑う。
「だって、男同士だよ。ドラマとかマンガの世界じゃなくて、現実世界でさ、しかも身内が。その辺どうなのかなぁーと思って」
ももチャンは、何の気なしに聞いてきたようだ。
相変わらず、目線はお目当の二人。
「んー俺は…、雅実だから受け入れられたっていうか…。受け入れたかったっていうか…。だから、全ての男同士に偏見ないかって聞かれたら、…正直言って、分かんない」
俺の基準は"雅実"。
逆に、"雅実"だから受け入れよう、理解しようと思った。
これが赤の他人だったら、もっとテキトーに考えたかもしれない。
もしかしたら、引いてたかもしれない。
「そっか。私は、何で偏見があるか分かんない」
俺の答えを聞いて、今度はももチャンが話し出した。
「確かに男同士だと子どもが出来ないってのはあるけど、それって男女間でもあることじゃん。子どもを作らないっていう夫婦も珍しくないし。なにより、男同士でも、二人が付き合ってることで何か不都合が生じる?って話。"他人 に迷惑をかけてない"、まさにそのひと言に尽きると思わない?私からしたら、駅とかで妙にねっとりくっ付いてる男女のカップルの方が、よっぽど迷惑だし。……って言っても、私も、他人事なんだけどね」
そう言ってももチャンが俺の方を向いた。
あまり見たことのない表情のももチャンが目に入る。
……前言撤回。
ももチャンは、何の気なしに聞いてきたんじゃなくて、至極真剣に聞いてきたんだ。
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