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待てなんか聞こえない
「は?お前、何言ってんの?」
「キス、したい」
「いやいや、とりあえずってなんだよ」
「ああ、違うか。ええと…ひとまず?とにかく?ついでに?」
なんか悩んでる。こいつ頭良いんだけど、たまに残念なんだよな。
日本語の表現が難しいらしくて、たまにこんな風に言葉がおかしくなる。
「なんだよ、in English」
「ああ…I want to kiss you」
「No thank you」
俺はノーと言える日本人なんだ。きっぱりと断ってやった。
一瞬の沈黙のあと、ガタっと音を立ててジャスティンが立ち上がり、こっちに向かって歩いてくる。何かと思って見上げれば、くいっと顎を取られた。
「え、ちょ…待てって!」
「聞こえない」
「ま…っ!」
ぐんぐん近付いてくる碧い瞳に射抜かれて、思わずぎゅっと目を瞑る。
どんどん近付いてくる。鼻先に吐息がかかる。
逃げようと思えば逃げられるのに、なんか体が動かない。
ほんの一瞬、唇に何かが触れて、びくっと肩が揺れたのが自分でもわかった。
心の準備くらいさせろっつーの!
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