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指先と心の温度差

「ずいぶん簡単な条件だな、ダイスケはそんなラクに手に入るのか?」 「っ、それ、は……」 俺なりの覚悟を示したつもりだった。けど、誰かに背中を押して欲しかったのも事実で。 何かきかっけがないと、こいつと先に進めないと思って言ってみた。それをこいつに委ねるなんて、狡い方法だとは思うけど、こいつの本気を見たいとも思っていて。 リングを見据える碧い瞳がすっと細められる。不敵に微笑むその横顔に、少しだけ胸が高鳴った。えっ、なんだよドキッとか、少女漫画か。 「…昼までには終わらせる。覚悟しろよ、ダイスケ」 ふわりと弧を描いて放たれたオレンジ色のボールが、乾いたネットの音を立てて次々とリングに吸い込まれていくのを、俺はただ黙って見つめていた。 うるさいくらいに鳴る心臓の音とは対照的に、緊張感で指先がどんどん冷えていくのがわかる。いやいや、俺が緊張してどうすんだよ… ただぼーっと突っ立って見てんのもあれだし、跳ねるボールをカゴに集めてやると、ジャスティンがそれをひたすら放る。ただそれの繰り返しだ。一定のリズムを保って、ゴールを積み重ねていく。 ちらりとその表情を覗き見ると、ものすごい真剣な顔で、不覚にもかっこいいとか思ってしまう俺は相当バカだな。こいつがかっこいいのなんて、最初から知ってたのに。 「大介、何やってんの?」 戻って来た継が、転がっていたボールを持って来てくれた。 「…あいつがスリー500本連続で決めたら、お前らみたいにするって言ってやった」 「マジかよ………つーか、やっぱまだヤってなかったんだな」 呆れたような継の言葉が、次に衝撃的な事実を伝える。 「あいつの連続最高記録、確か1000越えてなかったっけ?」 「………化け物か」

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