34 / 101
合宿終了、そして
最終日。ラストのゲームが終わり、挨拶して解散になった。双子は速攻走り出して、周りは爆笑。
俺はといえば荷物を纏めるふりをして、梅ちゃんや菅原さんと話してるジャスティンをちらりと見る。こっち見ろよ、バカ。
「…っ⁉︎」
手元のメモを指差しながら、あいつがこっち見てふっと笑った。それは一瞬だったけど、俺の顔が熱を持つには十分な時間で。
悔しい。なんであいつに翻弄されてんだよ俺は!
ぐあーっ、くそムカつく!
・
・
・
・
あいつを待ってるなんて思いたくなくて、なんとなく体育館を出る。とりあえず自販機に行く途中で、向こうから正木が歩いてきた。
「お疲れー。合宿終わり?」
「おー。あれ、お前は?」
「あたし文化祭実行委員だから、打ち合わせ」
あ、そうか。来月は文化祭があるから、そろそろ動き出すんだな。
あいつはその頃、どうしてんだろ…
そんな事をちらりと思い、俯いた俺の頭をぱこーんと叩かれた。
「いってぇ!何すんだよ!」
「なんて顔してんのよ…」
「…どんな顔?」
「あー、その頃あいついないんだよなー、向こうで何してんのかなー、って感じの顔」
絶句。なんだこいつ、エスパーか?
「ふふん、腐女子なめんなよ」なんて胸を張ってる。すげえな、腐女子。
で?と、自販機に100円玉を入れてボタンを押し、プルタブを起こして振り向く。いや、で?って?
「もうヤった?」
「なっ⁉︎おまっ!もちょっと包めよ何かに!!」
「包んだって中身は同じでしょ。で、どうなの?」
なんなんだこの女は?こいつに付き合う双子すげえな。
はあー、と長いため息を零し、昨日の事を話す。なんだかんだで相談に乗ってくれそうだし。まあ、本人は楽しんでるだけなんだろうけどさ。
一通り話すと、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
「ま、大丈夫。ロー君あんたにメロメロだから」
ほら、と後ろを指差されて振り返れば、二人分の荷物を抱えたジャスティンがこっちに走ってきていた。
「王子様の登場、なんてね」にやりと笑って手を振る正木の背中を見送る。なんだ、なんか、どうしよう。
「ダイスケ、帰ろう」
もう一度あいつに視線を向ける。嬉しそうに笑って、手を差し出してきた。
なんでこんなサマになってんだよ、俺の心臓壊す気か?
双子なら当然のようにその手を取るんだろうな。でも、さすがに俺は出来そうもない。だから、ポケットから小銭を取り出してスポーツドリンクのボタンを押すと、冷たいボトルを手渡す。
少しだけ触れた指先が、火傷しそうなくらい熱かった。
ともだちにシェアしよう!