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ゴールデンレトリバー
「……ケ…スケ、ダイスケ」
うるさい。人がせっかく気持ち良く寝てんのに、俺の許可なく起こすんじゃねえよ。
深いところにあった意識が引っ張り上げられて、ぎゅっと手のひらを握る。髪を撫でられる感触にうっすらと目を開けると、碧い瞳が目の前にあった。
ぽたり、頬に雫が落ちる。見下ろしてくる金色の髪からまた新しい雫が落ちてきて、冷たさにまた目を閉じた。
「ダイスケ、起きて」
「…起きてる」
「ほら、シャワー浴びてきて」
背中に腕を回されて、ゆっくりと抱き起こされる。こうしてくれんのを待ってたんだけど、そんなの言えるわけない。
にっこり笑うジャスティンの首に掛かるタオルを奪い取り、それを頭に被せて髪をわしゃわしゃと拭いてやると、おとなしくされるがままになってる。なんだこいつ、本当に大型犬だな。やっぱりゴールデンレトリバーだ。
一頻り水分をタオルで吸い込んでやり、そこでやっと自分の腕や体が軽いのに気付いた。こいつ、俺が寝てる間にマッサージしてくれてたのか。
「サンキュ、体ラクになった」
ベッドから降りて、くしゃくしゃなジャスティンの髪を整えてやる。嬉しそうに目を細めて、やっぱり犬とその姿が重なった。
前髪を掻き上げて、露わになった額にそっとキスしてやると、驚いたように見上げてくる。
「ふっ、風呂!入ってくる!」
かああっと熱くなる体を自覚しながら、ジャスティンの顔を見ないようにしてばたばたと風呂に向かった。
「…耐えられるか?」
真っ赤な顔で額を抑えるジャスティンがいたなんて知らずに。
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