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Take my hand and come with me
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天気のいい今日、創達の両親がくれたチケットで水族館へと来ていた四人。道行く人々は家族連れや恋人同士など、様々だった。
「じゃあ、また後でね」
「おう、後でな」
入り口ゲートの辺りで双子と別れ、大介とジャスティンの二人だけになる。
パンフレットを眺めるジャスティンをじっと見つめてみれば、ふと顔を上げたジャスティンと目が合って、慌てて逸らした。
「ダイスケ、何見たい?」
「べっ、別に、なんでも…」
急に顔を寄せてパンフレットを持ってきて、必然的に体も触れ合うくらいに近付く。もちろんジャスティンは確信犯だけれども、大介はそれに気付く事はなく、たったそれだけの事でドキドキと忙しなく動く心臓をどうにか止めようと必死に顔を見ないようにしていた。
「こっ、これ…!」と指差すのは、入り口付近にあるふれあいコーナー。水辺に手を入れて、海の生物に触れ合える人気のエリアだ。
「オーケー、行こうか」
「ん、え⁉︎ちょっ!」
すっとその細い腰にさりげなく手を当ててエスコートする。軽く押されて歩き出すとすぐにふれあいコーナーに着き、その手が離れて行くのを少しだけ残念そうな顔をしていたのは、本人だけが気付かなかった。
ちらりとジャスティンの顔をうかがい見たのも束の間、目の前にある砂浜を模したジオラマの水槽に駆け寄った大介。
「ははっ、ヒトデー!」
最初は恐る恐るといった感じで水の中に入れていた手もすぐに慣れたようで、側にいたヒトデを両手でそっと掬って見せる。そんな大介の様子をにこやかに見つめながらも、ポケットから取り出したスマホで写真を撮っていくジャスティン。
どれくらいそうしていたのだろうか、気付けば小さな子供が増えて来ていた。
「ほら、手ぇ出してみ?」と隣にいる男の子に手のひらを差し出すように言うと、そこに小さな魚を乗せてやる。すげー!と喜ぶ男の子に手を振ってきょろきょろと辺りを見回すと、すかさずまた腰を押されて歩き出す。
連れて行かれた手洗い場でしっかりと手を洗うと、濡れたままの手のひらで自分の頬を覆った。
「うはー、冷たくて気持ちい!」
「へぇ……」
火照った頬を冷やしていた大介の手首を掴んで引き寄せると、今度はその手のひらがジャスティンの頬を包み込む。「ほんとだ、冷たい」なんてにっこりと笑いかけるせいで、せっかく冷えた大介の頬に再び熱が灯る。
「そろそろ行こうか」
「………ん」
ゆっくりと離されるジャスティンの手のひらを名残惜しげに大介が目で追う。力の入らない自分の手を下ろすと、そこにジャスティンの手のひらが重なり、指が絡められる。
スローモーションのようなその一連の動きを見ているうちに、きゅっと力が込められたのに気付いてはっとして視線を上げる。
「行こう、ダイスケ?」
「えっ、あ………ああ、うん」
繋がれた手のひらの暖かさを感じながら、二人同じ速さで足を進めた。
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