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when I laugh, you laugh too
人波に逆らって屋外プールへと向かう。そこでは今さっきイルカショーが終わったらしく、続々と人が館内に戻ってきていた。
次に始まるアシカショーまではまだ少しだけ時間があるけれども、二人で最前列のど真ん中の席に着き、一枚のパンフレットを眺める。必然的に顔が近付くと、それに緊張感を露わにした大介に気付いたジャスティンが柔らかく笑った。
「暑くないか?」
「あ、うん、平気…」
「ジュース買って来る、待ってて?」
くしゃくしゃと大介の髪を撫でて立ち上がり、屋外プールに隣接する売店へとジャスティンが歩いて行った。
ふう、と息を吐いてその後ろ姿をぼーっと目で追い掛ける。
「あれ、そういや何買ってきてもらうか言ってない気がする…」
そう気付いた瞬間、金色の髪が揺れて大介の方を振り向いた。たったその一瞬で二人の視線が絡み合い、そして。
「…ッ!」
なんとも言えない、胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚が大介を襲い、同時にその笑顔に見つめられて体の中が一気に燃えるように熱を持つ。
こちらに戻ってくるその自信に満ちた笑顔から目が離せないのを自覚して、熱くなった頬を隠すかのように俯いた。
二つのカップを持って戻ってきたジャスティンが大介の隣に腰を下ろし、持っていたカップを手渡す。ほんの少し指先が触れて、大袈裟に思えるほど大介の肩が揺れたのを気付かないふりをして。
「何これ…?」
「オレンジとヨーグルトのスムージー、さっぱりしてそうだったから」
創が好きそうだな、なんて思いながらゆっくりとストローを唇に挟み吸い上げる。すぐに舌の上に冷たくてシャリシャリしたものが乗る。次第に甘酸っぱい味と香りが広がり、清涼感に満たされる。
こくこくと喉を鳴らしている様子をにこやかに見守るジャスティンも、自分の手元のストローを口に運ぶ。
「これ美味いなー。お前のは?」
「アイスコー…ひ、」
答えている最中に、その手首を掴まれ引き寄せると、大介がそのストローを咥えて吸い上げる。一口飲み込んで、停止した。
薄い唇にストローを咥えたまま見上げ、すこしだけ涙目になっている。ゆっくりと唇を開けてストローを離すと、うぇー…と苦悶の表情で舌を出した。
「にっが!なんだこれ!」
「ああ、甘いもの飲んだからじゃないのか?」
それ、と大介のカップを指差すと、今度はそれを口の中いっぱいに広がるように含んでから嚥下する。
ともすれば勘違いしてしまいそうな潤んだ目元を軽く拭ってやり、柔らかな頬をさらりと撫でて。ぷに、と人差し指で濡れた唇を突ついてみたり。
不意に開いたそこから白い歯が覗く。あっと思って指を引こうとしたが遅かった。がぶ、とそれに指先を甘噛みされて、驚きで硬直するジャスティンを見上げてにやりと笑った大介。
「調子のんなバーカ」
ぴん、とデコピンを一発お見舞いして、ケラケラと笑う様子を少しだけ呆然としながら見つめるジャスティン。
ゆるゆるとそこを手のひらで抑えて、ふっと微笑んだ。やっぱりこの笑顔が好きなんだなあと改めて実感しながら口に含んだコーヒーは、とても甘く感じた。
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