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A to Z
「ただいまーーーーって、いなかったっけ」
いつもの癖でキッチンに顔を出してから、椅子の上にジャスティンから受け取った袋を置く。
冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクのボトルを取り出して、一気に喉に流し込む。キンキンに冷えていたせいで少し頭が痛くなったけど、熱い体と頬がほんのちょっと冷えた気がする。
「ほら」
「…サンクス」
半分くらい残ったボトルをジャスティンに渡すと、それと俺の顔をまじまじと交互に見ながら受け取った。なんだよ、別に男同士なんだし、そんな事気にすんなよな。こっちが逆に恥ずかしくなんだろうがよ。
そんな事を考えながら上下する喉を見つめる。相変わらずいい胸鎖乳突筋してんな…
「部屋エアコン入れとくから、先に風呂入ってくれば?」
空になったボトルをゴミ箱に投げ入れる音にはっとして、でもそれを気付かれないように平静を装いながらそう告げると、え?という顔をされた。
いやいや、何がおかしい?
「……一緒に」
「誰が入るかボケ」
バシッと音を立てて背中を叩く。手のひらがジンジンするけど、たった一瞬触れただけでもその筋肉の付きかたに圧倒される。
この広く逞ましい背中を、いつか俺がこの手で作り出してやるんだ。
そんな事を考えながら、風呂場に向かったのを見届けて、創にもらった紙袋を開く。とりあえずタッパーやなんかを冷蔵庫に突っ込んで、もう一袋を持って部屋に向かった。
「……やっぱ、これって、アレだよな…」
少し粘度のある透明な液体。実際に見るのは初めてだけど、どうやって使うのかは知ってる。
今更怖気付いたわけじゃない。でも、恥ずいもんは恥ずいんだよ…
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