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A to Z
「…Hello?」
『おー、オレオレ』
「日本ではそういう犯罪が多いと聞いた」
『すぐ出たって事はまだヤッてねーのか』
「……何の用だ」
電話口からは楽しそうなケイの声が聞こえてくる。ああもう、まだだよ!だからなんだって言うんだ!
半ばイラつきながら返事を返すと、さっきとは打って変わって真面目な声になる。
『大介の事本当に大事にしたいなら、お前が色々と我慢しろ』
「…ああ、わかってる」
わかってるさ、だから今まで手を出さずにいた。いや、出せなかったのか。
大切にしたくて、壊したくなくて。でも、オレのものにしたい。こういうのを日本語で何と言えばいいんだろうか。
『んで。中見たか?』
「何の?」
『あーやっぱりか。大介が創から受け取った袋、一つにお役立ちアイテム入ってるから』
そう言われて部屋を見渡してみる。ん?あの袋か。
ダイスケの机の傍に置かれた紙袋。そういえば二袋あったはずが、ここには一袋しかない。
そっと中を覗き込むと、たくさんタオルが入っていた。
「タオル?」
『…の下に、ゴムとかローションとか入ってるから、ちゃんと使えよ?間違ってもナマですんな、滑り悪くて傷付けるし良すぎてお前ぜってー我慢できねえから』
タオルを取り出してみると、その下には色々と入っていて、電話口の向こうではケイが真剣な声で説明してくれている。
ダイスケの体を傷付けたり痛い思いをさせてしまうのも嫌だから、しっかりとそれを聞いて礼を言ってから電話を切ると、ちょうどそのタイミングでダイスケが部屋に戻ってきた。
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