「ただいまー」 キッチンに顔を出すと、母さんが出迎えてくれる。お土産に買ってきた焼きそばと焼き鳥を渡すと喜んでくれた。 窮屈な帯を解こうと手をかけたら「えっ、やだウソ、ちょっと待ってよ！」と止められて、テーブルに置いていたスマホを操作する。 「せっかくジャスティン君も浴衣なんだし、二人で撮らせてよ」 「えー」 「ほら、並んで並んでっ！」 ちらっとジャスティンを窺い見ると、嬉しそうににっこり笑って隣に立たれた。少し屈んで肩を引き寄せられる。 …なんだよ、イヤじゃないとか、どこまでこいつに溺れてんだよ俺… パシャッ！という電子音がして、それからパシャパシャパシャパシャっ！となぜか連続で聞こえて。 料理に関してはいい腕してるけど、それ以外は不器用な母さんは、写真を撮ると必ずブレる。ブログに上げる写真が撮れないと嘆く母さんに、連写機能を教えてやったのは俺。 「んー…あ、オッケー上手く撮れた！」 ほら、と見せられたのは、一体いつの瞬間にこんな表情をしたのか、二人が見つめ合って笑っているその表情だった。 …なんだよこの俺、幸せそうに笑ってんじゃねえよ。 「二人に送っとくわねー」 「サンクス！」 「いらねーよ！」 スマホを操作する母さんを残して部屋に戻ると、やっと締め付けていた帯を解く。ぱさりと床に落ちたその音に気付いたジャスティンが、驚いたように動きを止めてこっちを見た。 「えっ、なんで⁉︎」 「は？何が」 「オレがその紐を引っ張って、ダイスケがくるくる回るんじゃないのか？」 「お前それどこで覚えてくんだよ…」