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美しい思い出、だけじゃ足りない

【大介side】 どのアトラクションも混んでいて、待ち時間を考えるとそれほど数は乗れないだろう。まあ絶叫系はパスするとして、そうしたら数は絞れる。合間にショーを見たりすればいいか。 とりあえず手近なアトラクションの列に2人で並ぶ。おもちゃの人形が宇宙人と戦うシューティングゲームで、けっこう人気があるっぽい。 「こっち来て」 「えっ、なんで?」 「ほら、早く」 にこにこ笑いながら俺の腕を引っ張って、くるりと左右入れ替わる。すると、さっきまで眩しかったのが引いた。 あ、こいつ、自分の影に俺を入れたのか… なんだよ、キザったらしい事さらっとやってのけんなよな。カッコいいじゃんかよ… 「…お前が暑いんじゃねえの?」 「ダイスケは日に焼けると痛くなるタイプだろう?」 「っ、そう、だけど…」 確かにそうだけど、でも夏の始めにもう焼けてしまった肌は、これ以上は焼けないんじゃないか?そう言ってもこいつはにこにこ笑って「オレがそうしたいから」と、列が進んで場所が変わっても、俺を自分の影に入れる。 こうやって大事にしてくれてんのは分かる。けど、俺は可愛い女の子じゃないし、そんな事されなくても大丈夫だ。 守ってほしいわけじゃない。隣に並んで、対等でいたい。 一歩進んだところでまた止まる。影がかかる。 「…横、来い」 「ダイスケ?」 「と…なりに、いろっつってんの!」 察しろバカ!そう言って脛を蹴ってやった。 ☆☆☆☆☆ 30分くらい並んで入口まで進んだ。係りの人が説明をして更に進み、小さな部屋みたいなところに集められる。そこでまた違う係りの人がピストルの使い方や高得点の狙い目なんかを説明してくれた。 「では、行ってらっしゃい!」スーッと前方のドアが開いて、なんだか近未来的な乗り物に前の人から順番で乗り込む。くいっと腕を引かれて足を止められた。 「なんだよ、早く行くぞ」 「もしもこれでオレが勝ったら、キスしてくれる?」 「ふん、勝ったらな」 このアトラクションは小さな宇宙船型の乗り物に乗って、様々な場所にある的に向かってレーザー銃をひたすら打ちまくるゲームで、個人の得点も表示される。 この手のゲームって継に付き合ってよくゲーセンでやってるし、実はちょっと得意だったりする。 先に進んだ俺の後ろでニヤリと笑った顔に気付く事なく、アトラクションがスタートした。 「…マジかよ」 「シューティングゲームは得意なんだ」 出口付近でモニターに表示された得点は、こいつの方が0が一つ多かった。 だって仕方ないだろ、まさか中であんなスピード出たり落ちたりしながら移動するなんて思ってもいなかったし、そんな説明だってなかった。怖かったからつい安全バーにしがみついてみたけど、なんかこいつは笑いながらバシバシ打っていくから点差が開いたんだ。 くそっ、ニヤニヤしてんじゃねえよ… 「さっき約束した」と嬉しそうに歩きながら外に出る背中を叩いてやる。バシッといい音がした。低い声で唸って少し屈んだところで横に並んで、顔を近付けた。一瞬だけ触れてすぐ離れると、ばっと頬を抑えてる。 …別に口にするなんて言ってないし。 「………ッ!ダイスケっ、ここには!?」 「するかバカ…まあ、次、な」 そうだ、次までずっと覚えとけ。思い出なんかにしたらマジで嫌うからな。

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