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美しい思い出、だけじゃ足りない
【ジャスティンside】
ダイスケが、頬にキスしてくれた。
「ここには!?」と唇を指差してみるけれど、次にと言われて、つい期待してしまう。オレ達には、また次の機会があるんだって。
もちろん、今日の事を思い出なんかで終わらせるつもりなんか最初からない。今日は今日、長い人生の中の記憶の一部分だ。
この背中の痛みだって、ダイスケが側にいてくれるようになるまで忘れない。
「じゃあ今度来たら、またオレが勝つから」
「ばーか、俺が連敗なんかするかよ」
にっと不敵に笑う顔も、改めて好きなんだと思う。瞼の裏に焼き付いて離れない。
この顔も、にっこり笑った顔も、寂しそうな顔も、嬉しそうな顔も、照れたような顔も、全部覚えておきたいから。
だから、今日一日かけて全てを見たい。
「ダイスケ、I love you」
「っな!ばっ、なに…っ!」
ほら、まずは照れた顔。
この後は背中か頭か腹に激痛がセットでやってくるんだけど。ああ、今回は腹か。それも含めてダイスケだから。
ぷりぷりと怒って先に進んだ足が止まり、こちらを振り返る。そしてまた戻ってくるのがわかるから、少し大袈裟に咳き込んでみるんだ。
「…バカな事言ってないで、次行くぞ」
戸惑いながらも差し出された手をゆっくりと握り、並んで歩き出した。
この掌の暖かさも、ずっとずっと、忘れない。
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