71 / 101

美しい思い出、だけじゃ足りない

【ジャスティンside】 ダイスケが、頬にキスしてくれた。 「ここには!?」と唇を指差してみるけれど、次にと言われて、つい期待してしまう。オレ達には、また次の機会があるんだって。 もちろん、今日の事を思い出なんかで終わらせるつもりなんか最初からない。今日は今日、長い人生の中の記憶の一部分だ。 この背中の痛みだって、ダイスケが側にいてくれるようになるまで忘れない。 「じゃあ今度来たら、またオレが勝つから」 「ばーか、俺が連敗なんかするかよ」 にっと不敵に笑う顔も、改めて好きなんだと思う。瞼の裏に焼き付いて離れない。 この顔も、にっこり笑った顔も、寂しそうな顔も、嬉しそうな顔も、照れたような顔も、全部覚えておきたいから。 だから、今日一日かけて全てを見たい。 「ダイスケ、I love you」 「っな!ばっ、なに…っ!」 ほら、まずは照れた顔。 この後は背中か頭か腹に激痛がセットでやってくるんだけど。ああ、今回は腹か。それも含めてダイスケだから。 ぷりぷりと怒って先に進んだ足が止まり、こちらを振り返る。そしてまた戻ってくるのがわかるから、少し大袈裟に咳き込んでみるんだ。 「…バカな事言ってないで、次行くぞ」 戸惑いながらも差し出された手をゆっくりと握り、並んで歩き出した。 この掌の暖かさも、ずっとずっと、忘れない。

ともだちにシェアしよう!