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あなたの心をください

【大介side】 次のショーが始まるまであと少しあるから、2人で適当な店に入ってみた。そこはパーク内で一番大きなお土産ショップらしく、たくさんの人でごった返してる。 さりげなく腰に添えられた掌が、シャツを通り越して感じられるくらい熱くて。ちらっと顔を覗き込むけど、なんか飄々としてる。 なんだよ、もしかしたら緊張してんの俺だけ? じっと睨みつけてみたら視線がかち合う。はっとしたように慌てて目を逸らされたから、顎を掴んで無理矢理こっちを向かせた。 「なっ、なに…?」 「何じゃねえよ、なんで目ぇ逸らすんだよ」 「ちょ、ダイスケ、痛い…」 相変わらず彷徨う視線がむかつく。なんでちゃんと俺を見ないんだよバカ。 ぎゅうっと頬を抓ってやる。あ、柔らかくていいかも。 何が何だか分からないって顔してる。分かれよボケ。 「…一分一秒でも長く、俺の事見てろ」 それだけを絞り出すように言葉にして、目の前にあるチョコレートの箱を手に取った。創が好きそうなクランチチョコレート。 継には何がいいだろ?双子でお揃いのストラップとかもいいよな。 「お前は何がいい?」振り返ると、いきなりぐっと引き寄せられた。 「な、に…」 「何もいらない。だから…ダイスケの心をください」 耳元で熱く囁かれた言葉に、不覚にもドキッとしてしまった。

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