72 / 101
あなたの心をください
【大介side】
次のショーが始まるまであと少しあるから、2人で適当な店に入ってみた。そこはパーク内で一番大きなお土産ショップらしく、たくさんの人でごった返してる。
さりげなく腰に添えられた掌が、シャツを通り越して感じられるくらい熱くて。ちらっと顔を覗き込むけど、なんか飄々としてる。
なんだよ、もしかしたら緊張してんの俺だけ?
じっと睨みつけてみたら視線がかち合う。はっとしたように慌てて目を逸らされたから、顎を掴んで無理矢理こっちを向かせた。
「なっ、なに…?」
「何じゃねえよ、なんで目ぇ逸らすんだよ」
「ちょ、ダイスケ、痛い…」
相変わらず彷徨う視線がむかつく。なんでちゃんと俺を見ないんだよバカ。
ぎゅうっと頬を抓ってやる。あ、柔らかくていいかも。
何が何だか分からないって顔してる。分かれよボケ。
「…一分一秒でも長く、俺の事見てろ」
それだけを絞り出すように言葉にして、目の前にあるチョコレートの箱を手に取った。創が好きそうなクランチチョコレート。
継には何がいいだろ?双子でお揃いのストラップとかもいいよな。
「お前は何がいい?」振り返ると、いきなりぐっと引き寄せられた。
「な、に…」
「何もいらない。だから…ダイスケの心をください」
耳元で熱く囁かれた言葉に、不覚にもドキッとしてしまった。
ともだちにシェアしよう!