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しるし

☆☆☆☆☆ 「…これにする」 色とりどりのアクセサリーコーナーから少しだけ外れたところのラックにかかっていたのは、シンプルなミサンガ。赤と青の二本をそこから取り、手首に合わせてみる。 「ん、やっぱお前こっちな」と、ジャスティンの腕を取り色を合わせて満足したのか、にっこり笑う大介。 「ダイスケのは、ブルー?」 「おう。お前は赤のが似合うし」 ジャスティンに持たせたカゴには、すでに双子への土産物が数個入っている。そこへミサンガを二本、そっと重ねると、レジへと向かう。 キャラクターの描かれたパークの袋に入れてもらい、ミサンガだけはそのまま受け取って店を出た。何も言わずにジャスティンがその袋を持って、空いた手で大介の手を握る。最初こそ暴れて抵抗していたものの、今では諦めたらしく、素直に手を繋いでいた。 半歩先を大介が歩き、喧騒が少し収まった辺りにあるベンチに並んで座る。 「ほら、手ぇ出せ」 予めタグを取ってもらっていたミサンガをジャスティンの左手に結び付けると、満足したのかにかっと笑う大介。 「目指すはナンバーワンだからな」 「…ダイスケのも」 大介から青いミサンガを受け取って、その手首に同じように結ぶ。外れないか引っ張って確認すると、その結び目に恭しく唇を寄せた。 それはまるで忠誠を誓う騎士のようで、大介の手を取ったままじっと見上げる。 「…その時は、側にいてくれるんだろう?」 「さあなー?その頃きっと凄腕トレーナーになってるからな、俺に選ばれるくらいの選手になってたら隣にいてやるよ」 にんまりと微笑みながら、金色の髪をくしゃくしゃと撫でる。そのまま立ち上がると、指先で額をぴんっと弾いた。 「Ouch!」 「ほら、立て。何しんみりしてんだバカ」 耳と尻尾が垂れ下がったゴールデンレトリーバーそのものだと思いながら、少し赤くなったそこに触れて、つい今しがたされたようにキスを落とす。それはほんの一瞬だったけれども、その一瞬で尻尾が千切れんばかりに振られる。 じっと下から見上げて、その両頬を包み込む。ゆっくりと引き寄せても抵抗が無いのを確認して、柔らかなそこを触れ合わせた。

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