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ふわり、香る

暑苦しくて目が覚めた。 頑張って瞼を開くのに、なぜか何も映らない。ん?いやいや待て、俺起きてるよな? 頭を上げようにも体を動かそうにも、なんか後ろから抑えられてるみたいに動かないし、なんだこれ? うんうん唸りながらもぞもぞ動いてみる。あ、しまった、なんか更に動けなくなった。 「ん…ダイスケ……?」 「…………てめえの仕業かああああっっっ!!!!」 「ったく、俺は抱き枕じゃねえっつーの!」 自由に動かせた右腕で思いっきり鳩尾を殴ってやれば、「うっ…!」と唸り声をあげて俺の拘束が解かれる。その隙にそこから抜け出してベッドから降り、ググッと伸びをする。それに合わせてゆっくり息を吸い込むと、さっきまで包まれてたいい匂いが消えていった。 べっ、別にそれが寂しいとかそんなんじゃなくて!ただ、なんか、物足りないっていうかなんというか… くそっ、ムカつくな朝から…それもこれも、あいつが俺を、だっ、抱き…しめ、て、寝るから、だ……………… ぬああああああああっっっっ、朝からウゼェな俺!!!! 「ほらっ、グズグズすんなっ、荷物まとめてさっさと朝飯行くぞ!」 「えっ、あ、ああ…」 **** ホテル内のレストランで窓際の席に案内されて、小さめのテーブルに向き合って座る。なんか、近い…… 中庭から差し込む陽射しが、金色の髪をキラキラ光らせてる。まあ、なんつーかその、キレイ、だなーとか思ったり。 ビュッフェスタイルのレストランなので、ウェイトレスの説明を聞いてから席を立った。……んだけど、なんか、モヤモヤする。 ……今のウェイトレス、ずっとこいつの事見てた。頬とかさ、ちょっと赤くしちゃってさ、小走りで戻って他のウェイトレスとこっちチラチラ見てさ、気に食わねえ。くっそムカつく。 「どうした?」 「別に…ッ!」 ほら、と手渡された皿を受け取る。その手のひらが、そっと俺の腰に回されて引き寄せられて、なんかくっついてきた。 え、なんで? 「おい、取り難いんだけど…」 「……あのウェイトレスの事、気になるの?」 「はあ!?」 「確かにcuteだけど、ダイスケには敵わないし、今更もう離せないよ?」 少し屈んで耳元で低く囁かれる声に、触れられたままの腰のあたりがゾワリとする。でもイヤな感じじゃなくて。 シャツの襟元で、こいつがいつも身に付けてる銀色のロザリオがかちゃりと小さな音を立てる。そんな小さな音が聞こえるくらいの距離が、なんか心地いい。 だって、ほら、俺の好きなあの匂いがする。 「お前こそ、今更何言ってんだよ」 ジャスティンの持つ白い皿に、スクランブルエッグとかソーセージとか、なんか目の前にあるものを次々と乗せてやる。好き嫌いとか好みなんて知るか、そんなん。ついでに納豆も乗せてやれ。 黙々とそれを受け取るジャスティンの片手が、ついに皿の重さに耐え切れなくなって腰から離れて行くのをぐっと掴む。びっくりしたように見下ろしてくる碧い瞳。 「……離すな」 「はは、愛の重さってやつかな?」 「ふん、言ってろバカ」 さっきより更に引き寄せられたのは、きっと気のせいなんかじゃない。

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