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ふわり、香る
「…落ち着いた?」
「ん……」
ぽん、ぽん、とリズミカルに背中を優しく叩かれて、上がっていた心拍数がだんだんゆっくりになってくるのを感じる。と同時に、その音が耳元からも聞こえてきて、さっきまでの俺の心拍数とほぼ変わらないのに気付いた。
顔だけ上げてじっと見上げてみれば、碧い瞳と視線がかち合う。
「どうした?ダイジョウブ?」
「……ん、」
いつも余裕ぶっこいてるこいつが、実は緊張してたのか、なんて思うと、それを取り繕ってるこの態度も可愛く思えてきて。
ああもう、俺も相当バカだな…
ぐりぐりと肩口に額を擦り付けてみる。鎖骨に当たってちょっと痛いけど、でもこんな事すんのはこいつにだけなんだって思うと、なんかくすぐったい気持ちになる。頭ん中に花でも咲いてるみたいだ。
「あっ、あの…ショー、もうすぐ始まるから…」
「ん、分かってる」
あ、珍しいな、こいつがこんなあたふたすんの。右手が宙を掻いてる。
そっか、こいつが珍しいんじゃなくて、こんな事する俺が珍しいからか。
けどさ、たまにはいいよな?明日にはもう、出来なくなるんだから……
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