80 / 101

ふわり、香る

「…落ち着いた?」 「ん……」 ぽん、ぽん、とリズミカルに背中を優しく叩かれて、上がっていた心拍数がだんだんゆっくりになってくるのを感じる。と同時に、その音が耳元からも聞こえてきて、さっきまでの俺の心拍数とほぼ変わらないのに気付いた。 顔だけ上げてじっと見上げてみれば、碧い瞳と視線がかち合う。 「どうした?ダイジョウブ?」 「……ん、」 いつも余裕ぶっこいてるこいつが、実は緊張してたのか、なんて思うと、それを取り繕ってるこの態度も可愛く思えてきて。 ああもう、俺も相当バカだな… ぐりぐりと肩口に額を擦り付けてみる。鎖骨に当たってちょっと痛いけど、でもこんな事すんのはこいつにだけなんだって思うと、なんかくすぐったい気持ちになる。頭ん中に花でも咲いてるみたいだ。 「あっ、あの…ショー、もうすぐ始まるから…」 「ん、分かってる」 あ、珍しいな、こいつがこんなあたふたすんの。右手が宙を掻いてる。 そっか、こいつが珍しいんじゃなくて、こんな事する俺が珍しいからか。 けどさ、たまにはいいよな?明日にはもう、出来なくなるんだから……

ともだちにシェアしよう!