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広い部屋、大きなベッド
最悪の誕生日。けど、一生モノの約束をした。
まだ空港にいた母さんから連絡を貰って、駐車場で合流して四人で帰る。助手席に座ると、すぐに瞼が重くなってきた。
ちらりと後ろを振り返ってみれば、もうすでに創は継に凭れて眠ってる。普段運動しないやつにあんな走らせたんだ、そりゃあ疲れるよな…
そんな創の髪を梳いている継は、気持ち悪いくらい幸せそうな笑顔で。お互い心の底から安心出来るのはお互いの傍らなんだなって改めて感じる。
俺も、いつかはあいつにあんな顔させてやれんのかな……そんな事を考えながら、重くなった瞼を閉じた。
気が付けば双子はもう車を降りていて、家の前で停まっている。のろのろと座席から立ち上がりドアを閉めて、玄関をくぐる。
母さんはそのまま夕飯の買い物に行ってしまった。
シャワーでざっと汗を流して自分の部屋に入る。何の音もしない。
ベッドにどさりと倒れ込む。両手を広げても、何も触れない。
部屋を見渡す。誰も、いない。
「……はは、別に、いつも通りじゃん」
強がった言葉に返ってくる言葉なんかなくて、更に虚しくなる。
たった一ケ月ちょっとあいつといただけなのに、いなかった普段の生活が思い出せないくらい、あいつが一緒にいるのが当たり前になっていたんだ。
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