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きみの隣で眠りたい

【大介side】 ふっと意識が浮上する。 …そうか、さっきアイツから電話あって、そのまま寝落ちたのか。 最近ずっと眠れない日が続いていた。体は疲れてるのに、横になっても眠れない。 それが、ちょっとあの声を聞いたらコレだよ。なんなんだよ俺、ふざけんな。 握ったままの状態だったスマホは、もうとっくに画面が暗くなっていて。そっと耳元に宛ててみても、あの声を聞けるわけなんかないって知ってるのに。 「…くそっ、なんで寝るんだよ俺!」 もう少し話したかった。もっと話したかった。 …違うか、本当は、抱きしめてほしかった。アイツの隣で、眠りたかった。 スマホにぶら下がっているストラップをじっと見つめて、アイツがするみたいに唇を寄せてみる。それは硬くて、冷たくて。 「…バカじゃん、こんな……っ、」 アイツがしてくれたキスとは、似ても似つかない。 けど、もうここにいない奴の事をぐだぐだ考えたってしょうがないんだから。早く、一人に慣れなきゃ。 そう、別に前に戻っただけじゃん。そうだ、どうって事ない。 くるりと寝返りをうって、胸元のロザリオがかちゃりと音を立てたって。枕元に置いたままのシャツに縋り付きたくなったって。 「はっ、お前、色々残し過ぎだろ…っ」 アイツの事を想ってしまうのは、俺のせいじゃない。 くそ、考えたらなんかムカついてきた。 「はー…着がえよ」 こんな時は、さっさと着替えてランニングでも行くのがいい。そんでその後は、筋トレして、昼飯食って、そんでまた筋トレして。 今日の筋トレメニューを頭の中でざっと考えたら、なんかため息が出る。 あーあ、全部アイツの練習メニューじゃんかよ。もう考えなくても体が覚えてるっつーの… アイツの走るペースも、すぐ隣から聞こえる乱れない息遣いも、ストレッチする時の手のひらの感触も。 全部、ぜんぶ。 俺の体は、しっかり覚えてるんだ……

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