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【番外編】月の綺麗な夜に想うこと
【ジャス大】
毎年母さんが作るお月見団子。傍らにはススキが揺れている。
アメリカでもこんな風習ってあるのかどうかは知らないけど、いつか、あいつにもこの団子を食わせてやってもいいかな。
部屋の窓から見える月が妙に光ってる。上手くいくか分かんないけど、写真でも撮ってみるか。
ベッドに置いていたスマホを起動させて、カシャリ。とシャッターを切る。んー、まあこんなもんか。
メッセージアプリを開いて、今撮った画像を送信する。そのまま見ていたら、すぐに既読マークが付いて笑える。時差を考えずに送る俺も俺だけど、お前も朝っぱらからヒマなのかよ。
画面の中でオレンジ色に輝くその明かりがまるであいつの髪みたいだと思ったら、指先が勝手に動いていた。しまった、と思った時にはもう遅く、俺の意思とは無関係に通話画面に切り替わる。
『Hello?』
「っ、あー、おう…」
どうしよう、何言おう…つーかすぐ出るとか、ちょっと待てっつーの!
「つっ、月が、綺麗だったから!別に用はねえよ!」
『…ああ、本当に、キレイな月だ』
耳元で囁かれる少し低い声が、背中を通って胸に刺さる。くそっ、こんなの、俺らしくない。
揺れるススキを一本抜き取り、指先でくるくると茎を振る。
ああ、月よりもこっちの方があいつの髪に近いな。穂の部分に唇を寄せてみても、暖かくも何もないけど。
『…Japaneseの授業で習ったの、覚えてるか?』
「へ、何が?こっちにいた時の?」
『ああ……月が、キレイですね』
いや、それさっき言ってたじゃん。
そう口に出そうとして、はっとそこを抑えた瞬間、かああっと音がするくらい顔が一気に熱を持つのが自分でもわかった。
ちょ、それって、国語の授業でやったって…アレ、だよな?あの、夏目漱石が日本語に訳したってやつ…
待って、ムリ、なんだよお前ふざけんなよ…なんでそんないきなりそんな事…ああ、もともとは俺か。
『今夜はフルムーン?』
「えっ?あっ、ああ、そう、そう、うん、そう…」
『…ふっ、ははっ、どうした?』
俺の焦りを知ってか知らずか、心地よい声が耳に響く。
こんな離れててもこいつに翻弄されるなんてまっぴらだ。
「…なあ、」
『ん?』
「…I love you」
スマホを落としたのか、ゴトッと大きな音が聞こえた。珍しい、慌ててやがる。ざまあみやがれ。
『なっ!えっ⁉︎録音するからもう一回!ワンモア!!!!』
必死な様子を目に浮かべながら、ススキの穂にもう一度唇を寄せてみた。
ああ、さっきより暖かい。
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そんなわけで、中秋の名月です。
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