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これじゃ俺が構って欲しかったみたいじゃないか

お題拝借…確かに恋だった様より まさかの巻き添えをくった文化祭。 いや、ありえない…俺が女装とか誰得だよ………ああ、あの頭沸いた奴か。それならまあ、あり得るかもしれない。全く理解出来ないけどな! 事前準備も滞り無く進み、いよいよ当日。なんだか訳のわからない服だか布を必死に着て、正木に写真を撮られる。 「あ、スカート両手でちょっと摘んで」 「こうか?」 「ちっがう!それじゃ掴む!」 「はー?同じじゃん…」 いちいち文句を言いながらも、正木の注文に応えていく。まあ、こんなバカみたいな企画は、楽しんだもの勝ちだよな。 ちらりと横に目を向けてみれば、楽しそうな創と継。二人ともすごくよく似合っている。まあ創に関しては似合うのもおかしいんだけど、でも違和感なんか全く無いのが不思議だ。 しばらくされるがままに写真を撮られると、その使い道がちょっと気になって聞いてみようかと思って…やめた。だって、入り口兼受け付けにあるメニューには、写真一枚100円とか書いてある。誰の?なんて、もう聞くだけ無駄な気がするから。 それにしても、正木を筆頭にうちのクラスのチームワークというか、そういった類のものが感じられて、このイベントに懸ける意気込みみたいのがひしひしと伝わってくる。まあ、担任からしてこういったイベントごとが好きだし、その売り上げ金でぱーっと打ち上げやるって決まってるからなんだろうけど。 「オッケー。んじゃ、これロー君にも送っとくわね」 「…へっ?なんでそこでアイツが!」 「だーかーら!言ったでしょ?ワタ君はロー君のご指名でメイドさんなんだって」 そうだ、俺がこの女装をする原因は、今はもうここにいないあいつのせい。 半強制的にこの衣装を着た俺の写真を正木が俺にも送り付けて来る。送信先は、俺とあいつの二人。つまり、俺が今見ているこの写真を、あいつも見るって事だ。 ため息まじりにその画面を見ても、いっこうに既読の文字が付かない。当たり前か、向こうはまだ夜。きっと練習が終わって帰ってメシ食ってまったりしてる頃だ。そんな時までスマホなんか見ないだろ。 そう思ったら、なんか、胸の奥がギュッと掴まれたみたいに痛くなって。 服の下から銀の鎖を引っ張り出して、じっと眺めた。…ああ、だめだ。逆効果だったのか、目の奥までツンとしてきた。 そんな俺に気付いたのか、写真を撮りまくっていた正木が慌てたように肩を押して、パーテーションで仕切られた荷物置き場兼休憩室に押し込まれる。 「お、ま…いきなり何すんだよ」 「あーあ、無自覚って怖いわあ」 「…なんだよ?」 「…それ、ロー君のでしょ?一気に顔つき変わったもん」 ぴろん!と音を立てたスマホを確認すれば、今さっきの俺の写真が送られていた。 それは何故かさっきのと違い、俺にだけ送られてきたもので。意味がわからなくて正木を見ると、不敵に笑いやがった。まるで、継が何か企んでる時の顔にそっくりだ。 「自分で送ってあげなさいよ」 「面倒くせえ…」 「じゃあ貸して」 「あっ、なっ!」 一瞬のうちにスマホを取り上げられて、あっという間にその写真がジャスティンに送られてしまう。なんなんだこいつの行動力は! 呆気にとられたままだった俺の手に返ってきたスマホの画面には、しっかりと既読マークが付いていた。

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