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【番外編】いつでも、そこに。
*このお話は即興小説に投稿したものを加筆修正して掲載しています。*
【ジャス大】
夏休みのある日。日課のロードワークに向かうと、いつもの道が工事中のため通れなかった。隣をちらっと窺えば、同じようにこちらを見ていて。
そうだよな、こいつが道を選べるわけもない。
「しゃあねえな、こっちから行こうぜ」
「オーケー」
了承の言葉を聞く前に、俺の足は動き始めていた。
こいつと並んで走るようになってから、体が軽い。でも悔しいから言ってやらない。ぜってー調子乗るだろうし。
最初は道を知らなかったこいつは、いつも俺の後ろを付いてきていた。背中越しに聞こえる足音と息遣い。乱れない呼吸が少しムカついたけど、それは今の俺の目標でもあった。
すぐにコースを覚えたみたいで、隣に並んできた。たったそれだけの事なのに、なんだかすごく嬉しくて。
いつの間にか俺の息遣いも呼吸も安定してきていて、最近は冗談を言い合いながら走る余裕も出てきた。
「ダイスケ、look!」
ようやく馴染みの河原に出たけれど、そこはいつも通る場所よりもちょっと下流で、あまり来る事もない。
スロープを昇った土手の上からは、整備されたストリートバスケのコートが見える。
「へえ、こんなとこにあったんだな…」
「Go!」
「はっ?え、おい、ちょ…っ!」
手首を引かれて、河川敷に続く階段を駆け下りていく。ちょっと待て、ランニングの終盤になってこんな急な階段駆け下りるとか、俺の膝が大変な事になるだろうが!
案の定力の入らなくなったその瞬間に、体が揺れた。
まずい!とは思うけど、怖いとは思わない。
「ほら、気をつけて?」
「……ん」
だって、俺の隣には最高のパートナーがいるから、いつでも支えてくれる。
今だってほら、引き締まった腕が俺をしっかりと抱き寄せてくれた。
だからって、守られてるだけだなんてそんなつもりもない。お互いに支え合いながら、ずっと隣を走っていたいんだ。
「さあ、行こうか」
「…先行くなバカが」
差し出された手のひらをぐっと掴んで引き寄せて、同じ階段をゆっくりと降りて行った。
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