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「なぉー・・・ん」 「よしよし、たぁ・・・っぷり可愛がってやるからなっ」 「・・・んなーぉ・・・ごろごろごろごろ・・・」 よく晴れた昼下がり、(りん)の膝上には大きな黒猫が伸びきっていた。 燐に撫でられ、気持ち良さそうに咽を鳴らしている。 まるで黒豹のように立派な黒猫は、お察しの通り、(こう)である。 「今日は私がお前を(もてあそ)び尽くしてやる・・・ふふふ・・・」 「・・・んなー・・・」 昨夜も燐を散々抱き潰した煌は、罰として今日1日ただの猫でいるよう命じられていた。 わしゃわしゃと乱暴に撫でられても、尻尾を弄くりまわされても、立派な牙を触られても、大人しく猫に徹している。 寧ろ、燐に撫でられるのは好きなので、大して苦にはならない様だ。 「逆撫で~」 「なぁーお」 「耳もふもふ~」 「んなぁー」 「腹撫で撫で~」 「ぐるる・・・ぐるるるる・・・」 腹を上にし、両前足を上げて降参状態の煌。 だいぶぐったりしてきている。 「うぅん・・・これ以上やると動物虐待の様で気が咎めるな。仕方ない、そろそろ戻って良いぞ」 「・・・なぉー・・・ん・・・」 「ん?煌・・・?」 撫で責めから解放すると、煌は相変わらず猫のように鳴き、少し離れた所に座って毛繕いを始めた。 燐が声をかけても反応せず、まるで関心がないかの様に振る舞っている。 「なんだ、怒っているのか?怒っているのはこっちなのだぞ?ほら、もういいだろう、普通の猫のふりはやめろ」 「・・・・・」 「・・・こ、煌・・・?」 ちら、と燐の方を一瞥し、ゆったりと後ろ足を伸ばしながら立ち上がる煌。 そして、そのままゆっくり(もり)の中へと歩いて行く。 「おい、煌、何処へ行くんだ・・・ま、待て・・・っ」 振り返らない、燐の声にも反応しない。 以前、声をかけた野良猫の様に、此方に興味がないという振舞い。 「まさか・・・煌っ!行くな!待って・・・!」 慌てて駆け出す燐。 追い付いた大きな黒猫に、形振り構わず抱き付く。 「嫌だ・・・お願い・・・行かないで・・・っ」 「そんなに可愛らしくお願いされては、何処へも行けませんね」 「・・・へ?」 いつの間にか人の姿になり、燐を抱き締め返している煌。 しかも、満面の笑み。 「く・・・っ、謀ったなこの馬鹿猫ぉっ!!」 今日も、白蛇(はくじゃ)(もり)は平和です。

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