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第12話 同僚からの激励
松崎の住むマンションは、会社から──歓迎会をやった居酒屋からも、目と鼻の先だった。
それ故、酔い潰れた裕翔を押し付けられたのだろう。
「あ、おはよう、櫻井さん」
「新田さん。おはよう」
朝一、取引先に持っていく資料をプリントアウトしていると、プリンター前で同僚に声を掛けられた。
営業二課唯一の女性社員、新田だ。
高卒入社の為、先輩だが同い年で、同期を除けば裕翔が一番フレンドリーに接している相手である。
事務職で入社した為マッスル系では無い。寧ろ、小柄で丸々としていてとても可愛らしい女性だ。
「昨夜、どうだった?」
その新田が、体同士が触れ合いそうになるほど近い距離に入り、声を潜め謎の言葉を耳打ちした。
仲は良いがそこは異性、普段こんなに近付くことは皆無だ。
「えっ…、昨夜って…?」
ふわりと漂う女性の香りに動揺したのを悟られたくなくて裕翔はそっと足を下げるが、新田はその動揺を別の意味に捉えたようだ。
「やっぱり……。進展したのね!」
キラーン☆と妖しく瞳が光る。
「あの…、新田さん…? 人に指を指しちゃダメだよ…?」
「櫻井さんっ!」
「ヒッ…、はいっ」
「誰かに話したいなら聞くわよ。自分の胸の内にしまっておきたいって言うなら、そう言って。私はなんにも気付かないフリをして、二人を見守っていくからね」
「え? ……あの、二人…って…?」
新田はバッ!キョロ、キョロ!と辺りを見渡し、総務の男性がこちらを見ていることに目敏く気づくと、裕翔の手を引き給湯室へ足早に駆け込む。
「まぁさ、世間的には大変かもしれないけど、頑張りなよ。結局は、本人たちの気持ち次第だからさ」
「え……? あの…??」
「流石に昨日のアレはビックリだったけど、同性でも、って気持ちは分かんなくないよね。櫻井さん、綺麗だから」
「え…、待って、それって…」
「いやぁ、それにしても、昨日の松崎さんはカッコ良かったわ〜。酔い潰れた櫻井さん軽々担いで、『今晩 勝負掛けるから、上手く行くよう祈っててくれ』──とかなんとか言っちゃってもうっ!!」
「─────!!!?」
「ま、大概の人は冗談だと思ってたみたいだけどね」
「〜〜〜〜〜〜っっっ////」
「幸せにしてもらいなよ、櫻井さん♡ あっはっは、顔真っ赤でかわい〜」
ま〜〜つ〜〜ざ〜〜き〜〜〜〜!!!
それ以来、裕翔の中での松崎は上司である前に、寝込み襲い魔の変態という立ち位置に落ち着いた。
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