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第14話 家族写真

 「ああ、その写真な。うちのガキ、俺に似て可愛いだろ?」  いつの間に近くまで来ていたのか、松崎がヒョイと裕翔の上から写真を覗き込んだ。 「えっ、でもココ……、だって…ひとり暮らし、じゃ…?」  1LDKの松崎宅、他の誰かが住んでいる様子は無い。前に見た寝室でも、勿論ここ、LDKも、独身の男のひとり暮らしという雰囲気で。  しかもこんな、幼稚園児(ちいさな子)がいる気配なんて………、あっ…! 「離婚した?」 「不正解。俺は×(バツ)なんざ一個もついてねぇぞ」  じゃあなんだよ!?  どう見てもコレ、仲良し一家の家族写真じゃないか!  別れてないなら、奥さんが仕事で転勤になって、息子と2人で別居してるってオチ?  フルタイムの共働きの在り方、政府は国民に働け働け言ってないで、家族が共に過ごせる時間をもっと増やす政策を考えた方が良いんじゃないかな。働き方革命を銘打つなら、そこら辺の革命した方がよっぽど国民の為にならないか?  奥さん一人で仕事に育児、傍に居ない旦那より、近くにいる優しい男にコロッと来られたら、どう責任取ってくれるってんだ内閣府は。  ……にしてもこの男。奥さんと可愛い息子がいる身で! 入社したて不安でいっぱいの新入社員、酔わせて襲ったって……!  最低か!!! 「…………? ………あれ?」  憤慨しながら、もう一度改めた家族写真。 「どうした?」  裕翔は目を瞬かせて、頭一つ分近く離れた男の楽しげな顔を見上げる。 「なんだよ?」  じっと見つめられて照れたのか、松崎は裕翔の頭を掌で押さえ付けると、その天辺に顎を乗せ、先を急かした。 「似てないじゃないですかっ!」  その顎を払い除けた手で、裕翔は写真の子供を指差す。  目の前の男はただのゴリラだ。…ゴリラ……だが、イケメンの部類の……  ───いや! この際、顔面レベルは関係ない。兎に角ゴリラだ。  しかしどうだろう、肩車してもらって笑っている子供は、まるで豆柴。すこぶる可愛いのだ! 「本当に松崎さんのお子さんなんですか?」 「どうだと思う?」  口端を吊り上げたニヤケ顔が、言外に答えを表す。 「…………はぁ……」  此方も声には出さず、大きな溜め息で応戦する。  松崎のことを妻帯者だと勘違いし、それに乗った松崎に見事に騙されたことに漸く気付いた裕翔。  ならば一体この写真は何なのだと、気心の知れた風な三人の姿をじーっと見つめ、思案を巡らせる。 「…………あっ! わかった!」  そして裕翔は、ガラス扉の向こうの一枚の写真を指差した。

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