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第15話 裕翔の推理
左から三番目、家族写真と高校生の松崎、その間に挟まれたワイルド系イケメンの写真をビシッと指差す。
「この人の子だ!」
「ふぅん?」
楽しげに緩んだ口元がなんとなく気に触るが…。裕翔は松崎を見ないようにし、自分の推理を話して聞かせることに集中した。
「この人、松崎さんの親友ですよね。結婚して子供も産まれて、しあわせに暮らしてたんだ。なのに、親友さんに不幸があって……。
松崎さんは亡き親友のために、残された二人を気に掛けていると言う…」
「はい、不正解」
「えーっ!」
絶対そうだと思ったのに!
不服そうに尖った朱い唇に、松崎の目尻が緩く下がる。
「だって、松崎さんよりこの人の方がカッコイイし、お子さんに似てると思いますけど」
「へぇ…。お前、こう云う男が好みなの?」
「好みとかじゃないですけどっ、男だし。でも、普通にモテそうじゃないですか。松崎さんより」
「そうか? 対して変わんねぇぞ。ウケる層は変わってくるけど」
確かに、こんな見た目ゴリラな癖して、松崎は女性社員からも人気が高い。
「櫻井くんは綺麗だけど観賞用よねぇ。結婚するなら松崎さんみたいな人がベターかな」
「わかる! 自分より美人な男はちょっとね。絶対見劣りするし、逆美女と野獣とかって言われそう!」
女子更衣室から丸聞こえの噂話に、裕翔は顔を赤く染め、松崎が呆れたように笑ったのは昨日のこと。
「確かに松崎さんいいかも。頼れるし、男らしいし、包容力もありそうだし、マッチョだし」
「「マッチョ!」」
「イイ身体してるよねぇ!」
「うん!エロいエロい!」
「よく見たら顔も格好良いし」
「「よく見たら!ブッ」」
「営業の人たちにはゴリラって言われてるけど、それなりにイケメンじゃない?」
「それなりって…!」
「いやいや、でもさー、男は“それなり”ぐらいが丁度いいんだって。浮気の心配も少ないし、でも見目悪いわけじゃないから友達に引け目感じなくて済むじゃない。普通に出世もしてるし」
「おぉ……、なんか、妙な説得力」
「子育ても任せっきりじゃなくて、テキパキおむつ替えてくれそうな」
「あー、ね。イクメンの未来見える〜」
「逆に、櫻井くんはダメダメそうだよね〜」
「オムツ替えひとつでいちいち奥さん呼んじゃいそう」
「ママ〜、○ちゃんがオムツ替えてって泣いてるよ〜」
「あはは、あるーっ!」
「“ママ”なんて呼ばないし…」
耳まで真っ赤に染めた裕翔がポツリと溢した言葉に、その場の全員が小さく肩を揺らしていたとか。
「じゃあ、お姉さんとその息子さんとか?」
投げやりに吐き出された答えに、松崎は軽く目を瞠る。
「おっ、正解」
「えっ、そんなオチ!?」
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