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第16話 同士
裕翔は松崎を見、写真の子供を見、隣の男の写真を見、戻って松崎の顔を凝視した。
「え、じゃあ甥っ子さんなんですか?」
「そうそう。甥っ子と、子連れ出戻りで実家暮らししてる姉貴」
「はぁ」
なら、松崎は独身、真っさらな戸籍で、自分にちょっかいを掛けていても問題ない、と、………いやいや待て! それは別問題だ。
確かに本人妻帯者だったら更に大問題だが、そうじゃなくても、寝落ちた部下の乳首を勝手に吸うのはセクハラでパワハラで、大問題だ!!
「それは、実家帰ったときに撮られた写真」
「えっ、……あ、はぁ」
顎で指すからもう一度写真に目をやる。
190cmの長身と並んでも、足元はペタンコ靴なのに見劣りしない身長差。恐らく裕翔と同じか、それより高いか。
面と向かえば、大人の女性の雰囲気に圧倒されそうだ。
「………お姉さん、美人ですね」
口に出してすぐに、誂われる!と身構えたが。
松崎は、「なんだ?こういう女が好みか?」等どニヤついたりせずに、変わらぬ表情で相槌を打った。
「気ィ強ぇけどな」
「へえ…」
ショートカットに切れ長の瞳、紅い唇。
確かに、優しげな、儚げな…というタイプではなさそうだ。
「お前んトコも美人だろ。似てねーけど」
「うちも大概気が強いです」
「だな」
先程ショッピングモールで会った裕翔の姉を思い出し、松崎はカラッと笑った。
「花凛 は下の姉で、5つ違いなんですけど、昔っから散々虐げられていて」
「俺もだよ。気ィ強ぇ女を姉に持った弟の宿命だな」
「わぁ〜、同士〜〜っ!」
同じ境遇の者との出会い(?)に裕翔のテンションが一気に跳ね上がる。
「上の姉は年も離れてるから、普段は優しいんですけどね、何かあるとやっぱり女同士、母と三人で結託して!」
「あー、女がタッグ組むと強ぇよな〜。親父もタジタジだわ」
「松崎さんの所はせめて甥っ子さんが男の子で良かったですね!」
「ははっ、違いねぇ」
一通り盛り上がり落ち着いたところで、裕翔の中にふと、じゃあアレは誰だ?と疑問が浮かんだ。
「松崎さん、じゃあこの人は、どなたなんですか?」
甥っ子の父親と思わされた見知らぬ男を指差す。
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