18 / 46

第18話 午睡

お腹いっぱい昼ご飯を食べて、せめて洗い物ぐらいはと言ったけれど、客なんだからおとなしく座ってろ、とソファーを指されて。 有り難く、クッションを抱えながらまったりとテレビを流し観ている。 食後の一服と淹れてくれたのはニルギリで、口の中をさっぱりと洗い流してくれる。 料理上手なのも意外だったが、さらに紅茶にも拘りがあるとは思わなかった。 洗い物を終えた松崎が隣に座る。 「あ、お疲れ様です」 労いの言葉を掛ければ、表情を柔らかくして「おう」と短く応えた。 その顔がなんとなく可愛く見えて、裕翔は小さく笑みを零す。 あんなことをされた相手だし、繊細さに欠けるし、苦手な上司だと思っていたけれど……。 なんだか落ち着くし、松崎さんの隣、 嫌いじゃないかも……… たくさん食べて眠たくなって、“上司”の家だということも忘れて目蓋を閉じると。 隣から、うう〜、と小さな唸り声が聞こえてきた。 どうしたんだろう? 食べ過ぎでお腹が痛い? 「……今のは反則だろ…」 片目を開けて確認すると、隣の男は頭を抱えて苦悩しているようだ。 「あ〜〜、どうすっかなぁ……」 きっと夕飯の献立のことでも考えているのだろう。 食事は大切だ。ゴリラだもの。 具合が悪い訳じゃないのなら、と低い唸り声は気にしないことにして、裕翔はもう一度両目を閉じた。 帰る時間になれば松崎が起こしてくれるだろう。

ともだちにシェアしよう!