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第18話 午睡
お腹いっぱい昼ご飯を食べて、せめて洗い物ぐらいはと言ったけれど、客なんだからおとなしく座ってろ、とソファーを指されて。
有り難く、クッションを抱えながらまったりとテレビを流し観ている。
食後の一服と淹れてくれたのはニルギリで、口の中をさっぱりと洗い流してくれる。
料理上手なのも意外だったが、さらに紅茶にも拘りがあるとは思わなかった。
洗い物を終えた松崎が隣に座る。
「あ、お疲れ様です」
労いの言葉を掛ければ、表情を柔らかくして「おう」と短く応えた。
その顔がなんとなく可愛く見えて、裕翔は小さく笑みを零す。
あんなことをされた相手だし、繊細さに欠けるし、苦手な上司だと思っていたけれど……。
なんだか落ち着くし、松崎さんの隣、
嫌いじゃないかも………
たくさん食べて眠たくなって、“上司”の家だということも忘れて目蓋を閉じると。
隣から、うう〜、と小さな唸り声が聞こえてきた。
どうしたんだろう? 食べ過ぎでお腹が痛い?
「……今のは反則だろ…」
片目を開けて確認すると、隣の男は頭を抱えて苦悩しているようだ。
「あ〜〜、どうすっかなぁ……」
きっと夕飯の献立のことでも考えているのだろう。
食事は大切だ。ゴリラだもの。
具合が悪い訳じゃないのなら、と低い唸り声は気にしないことにして、裕翔はもう一度両目を閉じた。
帰る時間になれば松崎が起こしてくれるだろう。
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