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第23話 人事会議
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「人当たりもいいし、笑顔も可愛い、気配りも出来るし、なにより見た目が良い。この子は営業向けだと思います。夏木が抜けた穴を埋める、次代のエースを探していたんですよ。
と言う訳で、櫻井は一課に頂きます」
初めに発言したのは営業部営業一課長の佐々木だった。
三十半ば過ぎ、整った容姿に甘い笑み、話上手で聞き上手。気づけば気持ちよくこの男のペースに嵌められている、笑顔で人の気持ちを取り込む、営業部の稼ぎ頭だ。
「あー、その子ねぇ。うちの常務が欲しがってるんだよねぇ。タイピング能力も高いし、システム二課が合うと思うんだけど」
ふんわりゆったり待ったをかけたのは、システム部部長。
ここの上司の女性常務は自分、娘、孫娘と、三世代でジャ○ーズ好きの美形好きと有名で。
気に入った顔の新入社員がいれば、システム二課に捩じ込もうと圧力を掛けてくる。
「佐々木くん、うちの高山君や広川君なんか がお気に入りでしょう? こまめにちょっかい掛けに来てるし。傍にそんなに可愛い子がいたら、ちょっかいだけで済まなくなる気がしてねぇ。
今はセクハラ関連、男の子が相手でも問題になるからねぇ」
「そうですね。佐々木さんは危険だと思います。しかしこの顔は、内勤のシステム部では宝の持ち腐れでしょう。
櫻井の配属先は、営業二課がベストだと思います」
「こんな細くて繊細そうな子をゴ…失礼、体育会系の巣窟に? 半年持たずに倒れてしまうよ?」
「うちで身体が持たないなら、一課でもそう変わらないでしょう?」
「だったらやっぱり内勤のシステム がいいんじゃないかねぇ」
「いえ、体力面は問題ないと判断しました。我が課のむさ苦しいイメージを払拭するためにも、櫻井は営業二課に頂きます」
「部長課長相手に突っかかるなぁ、松崎」
「うちは常務の判断なんだけどねぇ」
「そんな卑怯な圧力には屈しませんよ」
この辺りで他の部署、事業所の代表たちは、そっと挙げた手を下ろしていた。
三人の譲らない戦いはヒートアップ。
最終的には前代未聞の人事裁決。
「もうジャンケンにしますか」
ストレスで薄くなった頭を抱えた人事部長が提案。
見事勝利を納めた松崎の所属部署・営業部営業二課が稀代の美形新入社員、櫻井裕翔を獲得したのだった。
「あ、この垣内ってのも、うちの部署に欲しいんですが」
「それは勝手にしなさい」
「うちは爽やか系しか採らないからご自由にどうぞ」
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