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第24話 俺のこと?

「じゃあ、垣内はどうして選ばれたんですか? 俺みたいのが二人いても使い勝手が悪いから?」 「使い勝手って、お前 別に使えない奴じゃないだろ。新人の中じゃあトップクラスでやれてる方だ。  垣内は、なぁ……」 松崎は裕翔からそろりと目を逸らすと、気まずそうに頭を掻いた。 不味いことを聞かれた、と顔に書いてある。 「……上がってきたデータが、総合的にうち向けだったからな」 「データ、……だけ? 入社前研修でいいなって思ったからじゃなくてですか?」 「あー……、それなぁ……」 常日頃ハッキリと物を言う松崎が、随分と歯切れの悪い声を出す。 「正直、見てなかったんだよな…」 「見に来たのに?」 「……妄想から飛び出てきたみたいな美人が居たもんだから、他に目が行かなかったっつーか……」 「えっ? でも、俺の行動は事細かく覚えてるじゃないですか」 「あー…、それで、やっちまったんだよなぁ……」 もっと深く掘り下げようとしたところで、聴きなれないメロディが鳴り響き。 「おっ、風呂が湧いたな。先 入って来い」 追い出されるような形で脱衣所に押し込まれた。       ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ まったりと湯舟に浸かりながら、裕翔はふとつぶやく。 「あれって………、もしかしなくても俺のこと……?」 浴室から出ると、バスタオルと共に着替えが用意されていた。 際どい黒いビキニはSサイズ。……って何だコレ。今回はサイズは合ってるけど形がおかしい。 まあ他に用意された物は無い訳だし、さっきまで穿いていたものをもう一日穿くのも嫌だ。ノーパンも嫌だ、では他に選択肢が無い。 仕方なく足を通して引き上げると、ボクサーパンツよりもピタッとしたそれは、なんとか局部を覆い隠せる布量で。 朝勃ちしたら出ちゃわないか…? 不安を感じつつ、パジャマを手にする。 どう見てもビッグサイズのチェック柄のパジャマの上は、タグを確認すればやっぱり3L。 パンツ用意するならパジャマも用意してくれ、等と勝手なことを思いながら、裕翔はずり落ちる肩を気にしながらボタンをひとつひとつ締めていった。 で、下は……… 当然、穿いても簡単にずり落ちる、折らなければ裾を踏んで転ぶであろうサイズのズボンを貸す気はなかったようで。 「彼シャツか!」 ホントにあの人は……。絶対、俺で遊んでるよな。 鏡に映る自分の姿をチェックして、裕翔は軽く溜息を吐いた。 ───彼シャツ似合う自分の顔!! そして、ふいにそこに置かれた物の存在に気付き、ギクリと肩を強張らせる。 洗面台に用意されていた、まだ新しいドライヤー。 短髪でタオルドライが常の松崎が、それを持っている理由を想像して、裕翔は無意識に唇を噛んだのだった。

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