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第26話 侵略するゴリラ
筋肉、ヤバかった…!
なんであんなに肉が硬いんだ。アメ牛か!
ずっと水泳やってたって言ってたけど、………水泳ってスゴい!!
俺も水泳始めようかなぁ。
水泳で鍛え上げられたムキムキボディ、逆三体形の俺!!
………………ダメだ。
100%ダメなやつだ………。
だって、顔と体が合わないもん。
合成写真みたいになる、絶対!!
鍛えて、顔がゴリ化するのもイヤだしなぁ……
カルピスソーダを一口、裕翔は妄想に耽る。
もし俺がゴリラだったら……
美しすぎるゴリラって有名になって……。
……動物園に見物客が大挙して押し掛けそうでちょっと怖い…。
ともすればナルシスト、自意識過剰と評されそうな物言いだが、その自己評価は間違いではないし、幼い頃から周りから散々、蝶よ花よと持て囃されて生きてきたのだから仕方が無い。
松崎さんと並んで、イケメンゴリラと美しすぎるゴリラ……って、なんでそこでも松崎さんと一緒じゃなきゃいけないんだよ。
アレだよね。きっと、動物園の人が俺に見合う美人なメスゴリラを何処からか連れてきてくれて、…………所詮ゴリラか。
彼女は欲しいけど、ゴリラのメスはイヤだなぁ。
だったら、松崎さんと2人のゴリラ舎の方が………………、んん??
何故か思考がゴリラに流れていたことに気付いた裕翔。
う〜〜っ、と頭を振り回す。
なんだろ…。松崎宅 にいると心がゴリラに占領されていく……。
ていうかあの人、ゴリラって言っても実はヒト科だし、一時期話題になったイケメンゴリラよりも大分人間寄りだよな…。
そもそも髪伸ばせばあのウルフになるんだし。
顔だけ見れば、結構イケメン……だし?
そうだよ! なんで髪伸ばしたくらいでワイルド系なカッコイイ男になれるのに、あの人ムダに髪短く切ってんだ!
勿体無い!あーもう、勿体無い!!
なのに女の人にモテるし! 男からも憧れの眼差し向けられてるし!
なんだよ、今って巷はゴリラブームな訳!?
あの人が頼り甲斐あってカッコイイのに比べて、俺は鑑賞用。少し遠くから観てるくらいが丁度いいとか、付き合ってみたらイメージと違ったとか、もっと繊細だと思ってたとか………ほっとけ!
大体みんな、見た目だけで人のこと判断し過ぎだから。
夏場にあった暑気払いの飲み会で、全力で食べた俺に引かなかったのは、松崎さんだけだった。
遠慮せずに食べろって言ったくせに、二課の他の皆だって俺以上に食べてたくせに、俺がちょこっと張り切っただけで、こっちをギョッとした目で見ちゃってさ。
松崎さんだけが、優しい目で楽しそうに笑って、「これも食うか?」って遠くて届かなかったおかずを俺の取皿に乗せてくれたんだ。
そう言えばなんでかあの人、毎回、俺の隣で呑んでるなぁ。
俺に飲ませようとする面々に、「コイツ飲めねぇから」っていちいち断って代わりに呑んでくれることには、すごく感謝だけど。
やっぱりあの人、俺のこと大好きだよな………
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