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第3話

毎週金曜日の22時、その扉は開かれパーティーが始まる…… そこは会員制の限られた人しか入れない高級ホテルのスイートルームのひと部屋。 客は一流企業の社長や御曹司とまさにセレブだらけ。 そんなセレブ達に混ざっても違和感がないようにと、正装に身を包んだ俺は偽名を使ってターゲットに接近する。 「いらっしゃいませ……若葉(わかば)様」 「あの方は……」 「奥へご案内します────」 “シャンパンを飲む会” 表向きはあくまでそういう名目で開かれているパーティー。 そして、“若葉”という名前は仕事で潜入捜査の時に使う偽名で、本名は葉山航平(はやまこうへい)というありきたりな名前だ。 俺が扱う仕事は主に身辺調査で、簡単に言ったら探偵のようなもの。 依頼されたターゲットを調査して調査報告をする。 簡単なようだけど、色々と厄介なことも多くて、実は今回も色々とめんどくさい案件な気がしてならない。 「若葉くんこんばんは」 「こんばんは、隼人(はやと)さん」 ターゲットの彼に会うのは今日で一応……2回目。 その彼の名は藤堂隼人(とうどうはやと)、29歳。 数ある有名商業施設を束ねる藤堂グループの跡取り息子。 いつも黒いスーツに身を包み、清潔感のある黒髪はすっとした顔立ちによく似合う見た目は好青年だ。 その彼の婚約者から身辺調査をして欲しいと依頼を受けたのが事のはじまり…… 「今日は何がいい?」 「そうですね……」 人が行き来するざわざわとしたフロアとは違い、奥の部屋は比較的静かで彼に初めて会った次からは個室となるこの部屋を要求するようになった。 その方がゆっくりと話が出来るし、仕事上好都合だから。 ただし、俺にとっては都合があまりよくないことがいくつかある。 それは…… 「……ッ……ちょっと……」 「どうした?」 「距離が近い……って……」 「近くないとキス……できないだろう?」 「いや、とりあえずシャンパンを……」 「飲むよ?でもこれは挨拶代わりだから」 シャンパンを飲むと言う名目とは別に、こうして気に入った相手と夜のお遊びまでしてしまうこと……しかも男同士で。 ノーマルなのかゲイなのか……バイなのか、誰がどうとかは別に関係ないらしい。 品定めをするように気に入った相手を見つけると奥の部屋へと消えていく。 そこで何をしているのか……馬鹿な俺でもわかった。 ここでは、そういう行為までも夜な夜な行われている。 下調べの段階では表向きの名目でしか情報が上がってなかったから、先週初めてここに来た時はびっくりした。 とりあえずはターゲットに気に入られようと必死にアピールした結果、なんとかこうして近づくことに成功したのだけど……彼からのスキンシップは会うごとに増していった。 「あ、の……ッ……」 「こっち……向いて……ッ」 シャンパンを口移しで飲まされ、そのまま口付けされると舌を絡めながら彼が短く息を吐く。 「ん……ッ……あ……んッ」 「もっと口開けてくれなきゃずっと続けるよ?」 キスの合間にそう意地悪く、でも酷く甘く囁かれ、こんな筈じゃないのにと脳裏を過ぎりながらもどんどんと彼のペースに引きずり込まれていく。 そして、2人で座るには大きすぎる革張りのソファーがギシッと音を立てるとその唇は離れていき、そのまま今日のシャンパンについて彼が語り始める…… 「今夜のシャンパンの銘柄は───」

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