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第4話
断片的に思い出す、あの日の事。
10年以上も前のことだ……記憶が散乱しててもおかしくない。
だけど……
「……葉山さん?」
「…………。」
「ちょっと!葉山さん?」
「え?!あ、ごめん、なんか言った?」
最近の土曜日の昼間はいつもこうだ。
あのパーティーから帰るのが朝方。
それから仮眠を取って事務所で報告書を纏める。
必然的に寝不足にもなるわけで、雨宮の話もろくに聞いてないないことが多くなる。
「ちょっと、大丈夫ですか?あと何回行くんでしたっけ?セレブパーティー」
「大丈夫だよ、ただちょっと眠たかっただけ。パーティーはあと2回、かな」
「もう行かなくてもいいんじゃないですか?」
「うーん……まぁ」
「それにターゲットにやましい事とかないんでしょ?」
「やましい事……ねぇ」
「あるんですか?浮気とか?」
雨宮には、あのパーティーに裏があることは言っていない。
それに、彼としていることももちろん。していることと言っても俺たちはまだキスまでしかしてないけど。
「……別に何もないよ」
あのパーティーの実態が雨宮にバレるのは時間の問題だろうけど、多分こいつには理解できない世界だと思うからギリギリまでは隠しておこうと決めていた。
だから、何もないと今は嘘をついた。
「いいなぁ、仕事とはいえ毎週美味しいシャンパン飲めて」
「おまえは呑気でいいよな」
「どういう意味ですか」
シャンパン飲めるけど、それだけじゃないんだよって喉のここまで出かかったのを飲み込み、別に……と適当に返事をして話を切り替えた。
*
「今日は元気ない?」
「え?」
「だって、今日は来てからずっと何かを考えているようだから」
「別に……何もないですけど」
今夜も彼と二人、個室でシャンパンを飲みながら時間を過ごす。
「そう?てっきり彼女と喧嘩でもしたのかと思った」
「いや、彼女なんていないですし」
「だよね、いたらこんなとこ来ないもんね。·····それに、ここに来るようになったのには理由があるんだろ?」
「……え」
隣りに座り身体を密着させながら、覗き込むように俺を見つめるとそんなことを言ってきた。
今日は何かが違う……と、気づいたのはちょっと前からだった。
挨拶代わりといつもしてくるキスを今日はされなかった。
それに、今日はシャンパンを一本空けたら帰ると言われたのだ。
「あ、そんな顔させるつもりはなかったんだ、ごめん。今のは聞かなかったことにして」
「隼人さんこそどうしたんですか?何かあったんですか?」
「……いや、別に。でも、ちょっと疲れてるのかもしれない……」
明らかにいつもとは違う彼の表情……そして、気になる物言い。
不思議に思いつつも大丈夫ですかと問いかけ、その表情をしっかりと捉えた時、何故か彼は俺の腕を取りそのまま抱きしめてきた。
「隼人……さ……ん?」
「────あの頃より……」
「え……?」
「いやっ、なんでもない、ごめん……今日は帰る」
急な行動にびっくりしていたらそんなことを言い出し慌てたように身体を離した彼は、急に帰ると言い出した。
あの頃……より……って……
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