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第3話
ヨシ宅につき、荷物も運び入れる。
ヨシの家は一階に広いリビングキッチンがあり、テレビやテーブルとソファが置いてある。
奥に寝室が一つ。浴室まわりの部屋が一つ。
二階もあるが今日は使わない予定。
「お邪魔します」
ヨシに続き、瞬助たちもリビングに入っていく。
「先にメシ作っとくからみんなゆっくりしてて」
料理上手なルードはヨシに断ってキッチンに入っていく。あらかじめ下ごしらえはして来ているようだ。
ジュースやお菓子を出して並べながら、瞬助はメインの仮装衣装を取り出す。個別に袋に入っていて、ラベルが付いている。
「こっちがL〜LLサイズで、こっちがS〜Mサイズだから、コウジとお兄さんはMの衣装に着替えてな、Lは早い者勝ちかな、くじ引きする?」
「ってこれ、ワンピース!?」
渡された衣装を見て驚くコウジ。
「あぁ、魔女の仮装か」
隣にいたアキラも確認して呟く。
「なんでこれ!?瞬!!」
コウジは衣装のチョイスが気に入らなくて問い詰めるが…
「いや、演劇部の奴に任せたから、俺のせいじゃないし、コウジとお兄さんサイズそれしか無かったんだよたぶん!」
軽く交わすが、もちろんチョイスは瞬助。
アキラとコウジ兄弟を魔女っ子にさせる手はずだ。
「えー、僕やだよ女装なんか」
やはり嫌がるコウジ。
「今日はみんなで仮装パーティなんだぜ、気にしない気にしない」
集団力を発揮して、瞬助は笑顔でかわす。
「ここで着替えていい?」
アキラは着替える気満々で聞く。
「あー、いや、お兄さんとコウジは奥の寝室で着替えて待っててください!」
「なら、コウジ、行くぞー」
頷いてコウジの腕を引き、奥の寝室へ向かう。
「ちょっとアキ兄!?」
「遊びなんだから、ゴネない!早く行って着替えよ」
そう、納得してないコウジを連れて寝室に消えるアキラ。
寝室で衣装を袋から出してみるアキラ。
「えーと、このセット、どれから着るんだろ」
ワンピースや、タイツなど色々パーツが出てくる。
「アキ兄、これマジで着る気?!」
「まあ、いいじゃん、外歩くわけじゃ無し、オレはBOUSでもっと凄い格好させられたことあるしな」
BOUSとはアキラ、みずき、ヨシが所属していたBLAV会社のこと。アキラはBOUSでも売れっ子の受専だったから。
「え、どんな?」
「んー?服全部透けてるヤツとかエロ下着とか」
「うわ、絶対嫌だ、ていうか瞬に絶対言わないでよ、変な知識入れたら大変なことになるんだから」
「はは、分かった分かった、つか早く着ろよ」
衣装を並べ手に取りながらコウジを促す。
「うー、なんで魔女」
まだ抵抗しているコウジとは反対に、アキラは衣装を身につけ始める。
「オレら用のサイズがなかったって言ってただろ」
「帽子だけじゃダメかな」
でかい帽子を手に取り呟く。
「諦めて着ろって」
相当粘るコウジに苦笑いする。
「アキ兄…普通にセクシーだし」
抵抗なく黒タイツを履くアキラを見て感心する。
「やっぱこれ履きにくいな、腕麻痺しそう…あとワンピースとズラ、帽子と靴のセットか、魔法の杖もあるし本格的」
苦戦しつつ、タイツをなんとか履いて、次々着替えている。
「大丈夫?手伝う?」
病気持ちの兄を心配するが…
「大丈夫、遅れるからお前も早くしろって、ほら、オレとの最期の想い出のイベントになるかもしれないだろ、記念記念」
そんなことを突然笑いながら言うアキラ。
「もう、縁起でもないこと言わないでよ」
「ま、このまま倒れて病院に担ぎ込まれるのはちょっとヤだけどハロウィンだし察してくれるだろ」
「アキ兄!ったくもう、ホント心配してるんだからね、今日もしんどくなったらちゃんと休んでよ」
茶化すアキラにため息をついて言い聞かせる。
「ハイハイ、できた!どう?魔女っ子」
さっさと着終えたアキラ、コウジに見せながら聞く。
「…信じられないくらい似合ってる」
「そ、良かった良かった、次はお前な」
かなりの魔女っ子具合に変身したアキラは魔法の杖でコウジ衣装を突き促す。
「わかったよ、もう」
観念して着替え始めるのだった。
そうして各々、仮装の準備を整えて戻ってくる。ルードだけは調理を優先しているので後回しだ。
ちなみにLサイズ衣装組は、ヨシが海賊、みずきがドラキュラ、ルードが狼男、瞬助がゾンビで決まった様子。
演劇部の小道具を使い、それぞれにメイクなどを自由にして、みんなそれらしい格好になっている。
「コウジ着替えられた?」
最大の目的だったコウジのコスプレを達成する為、ワクワクドキドキで寝室にいる2人に声をかけてみる瞬助。
「一応、着替えたけど…」
扉の向こうで答えるコウジ。
「はは、可愛い可愛い」
アキラは中でまたからかっている。
「アキ兄うるさい!」
「じゃ、見せて見せて!」
みんなも集まって来て、SMサイズ組の仮装に興味津々。
「はい、じゃ行くよ」
コウジの手を引いてリビングに戻っていく。
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