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第4話
ゲーセンを出た後、茂木くんは一定の距離を保って後ろを付いてくる。もう、逃げる気は無いみたいだけど。人とぶつかりそうになってはあたふたしてる。
僕と話す時もそうだけど、なんかいつもと俯いてボソボソと頼りなく話すんだよね。茂木くんって、背高いし、背筋を伸ばしてもっとしゃんとしてれば、少しはマシに見えるのに。勿体無い。
「ふえっ!?な、ななななに?」
「あ、ごめん……」
なんで、今触ったんだろう。
「あ、ここ入ろう」
ファミレスの店内は、時間的に大学生や社会人が多い。数年後、僕達もこうなってるんだよなぁ。大学に行っても、僕は笑顔を張り付かせてるんだろうか。やだな。
「何食べる?好きな物頼んでいいよ。って言っても最終的には、茂木くんが払うんだけど」
なんて、そんな事考えても仕方ない。こんな風にわがまま言えるのも今だけ。よし、思いっきり高いの頼んじゃおう。
「茂木くん、飲み物!持ってきてー」
「あ、うん。なにが……?」
お茶系チョイスしとけば無難だと思うけど、困った茂木くん見てるの面白いし。
「なにがあるか分からないから、連絡して?」
「えっと……」
「ほら、早く。スマホだして」
茂木くんは言われるがまま、カバンからスマホをだして僕に渡してくる。別に貸せとは言ってないんだけど。まぁ、いいや。
「ねぇ、無料通話アプリは?」
「やった事なくて」
「嘘でしょ?」
今どきそんな人いる?茂木くんのスマホは買った時のまんまなんじゃないかって思う程、何にも入ってない。大体ロックすらかけてないのもありえない。
「ちょっと、パスワード入れて」
「う、うん」
ダウンロードから始まって、アナウンスに従って登録していく。ていうか、電話帳も殆ど入ってない。茂木くんって、本当に友達いないんだ。
「これでオッケーっと」
手続きが完了して、僕のアプリにも茂木くんの名前が表示される。
「じゃ、ドリンクバー着いたら連絡して?」
「天子の、連絡先……」
茂木くんは、そう呟いてニヤニヤしてる。
「あ……」
僕、なに連絡先教えるんだろう。これじゃ、学校意外でも嫌がらせしてくるかもじゃん。もうー。僕のバカ!
「茂木くん、ぼぉとしてないで飲み物!」
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