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第5話
「あ、ごめん……」
はっとした茂木くんは足早に店内の奥に歩いていく。
どうしよう失敗した。あんまりにも素でいられるのが楽しくて、自然にあんな事しちゃったけど。きっと茂木くんの行動はエスカレートする。
「天子」
「なにっ?」
自分の行動にイライラする。モヤモヤする。
「えっと……」
今、自己嫌悪中なの。ていうかなに?手ぶらで戻って来て、まごまごと鬱陶しい。さっさとやる事やってよ。
「その……」
「どうかしたわけ?」
萎縮したり恐縮したり、そういった演技だけは上手いよね。
「ごめん。種類、いっぱいあって、伝えるの時間かかりそうだったから……」
「は?」
なんなの?僕の事嫌いなら適当にミックスジュースでも作って持ってくればいいじゃない。そういうの、いじめのセオリーなんでしょ。
「……だから、なに?」
「あ、の……」
「一緒に来てっていうの?」
「いや、そうじゃなくて……」
ぷるぷると頭を振る茂木くんにイライラする。なにがしたいの?僕の物を盗む程、僕が嫌なくせに。
「メニュー言うから、選んで……」
「え?」
茂木くんは頭の中を再生させてるのか。微かに上を向いて、ところどころつっかえながらもメニューを言い始める。
意味が分からない。そんなの。そんなの。
「通話でやればよくない?」
「通話?」
ぽかんと口を開けた茂木くんは、本気でメニューを覚えてきて、口頭で僕に伝えようとしてたんだ。
「ええっと……天子、その……」
呆れた。本当に茂木くんは現代人なんだろうか。
「……今回は僕の説明不足なのも悪いし、一緒に取りに行ってあげる」
「ほんと、ごめん。俺、役立たなくて……」
役に立つ?なに言ってるの?盗人のくせに。反省してるって事?
「いいから早く行こう。後で使い方教えてあげるから、次からはちゃんとやってよね」
「う、うん……」
しょんぼりしながら僕の後ろをついてくる茂木くんと居ると、なんか不思議な気分になる。
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