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第6話
ドリンクバーから戻ってご飯を食べてる時もそう。ずっと僕の事みてたかと思うとキョロキョロと目を動かし、また僕を盗み見る。その仕草が何を意味してるのか、気になってしょうがない。
「さっきから、僕の事ばかり見てるけど、どうかした?」
「あ、や……ごめ……」
うーん。食べたいのかな?
「あげる……」
意気込んでお肉ばっかり頼んだけど。結構、油っぽいし。これ以上もういいや。
「もう、お腹いっぱいだから、茂木くん食べて」
「え?」
「残したら許さないから」
普通、嫌いな人の食べ残しなんて嫌に決まってる。なのに、なんで?茂木くんは、普通に食べてるの?気持ち悪くないの?僕の食べかけだよ?拒絶しなよ。なんで、そんなに嬉しそうに食べてるの?そんなに、そのセット好きなの?もう、よくわかんない!
「あの、天子……」
「な、なに?」
急に茂木くんが思いっきり頭下げるから、びっくりしてジュースでむせそうになったじゃない。
「今まで、本当にごめん」
「へ……?」
茂木くんは今にもステーキプレートに鼻先が付きそうなほど頭を下げて、ごめんと繰り返す。
なんで、このタイミングなの?確かに謝ってほしかったけど。なんか、凄いモヤモヤする。
「飲み物……。飲み物、何がいい?」
「え?のみ……?」
なんか、やだ。これで茂木くんとただのクラスメイトに戻っちゃうの、なんかやだ。
「僕の、無くなっちゃったから。ついでに持って来てあげる」
「え?いや、飲み物なら俺が……」
「良いから!」
なんで。なんでこんなに落ち着かないの。
「いいから、さっさと食べ終わっちゃってよ」
違う。それじゃこの時間が終わっちゃう。茂木くんにもっと、もっと僕のわがまま聞いて欲しい。もっと、茂木くんと一緒に居たい。
「あ、アプリの使い方!教えなきゃいけないんだし。それに、何度謝られても許す気ないから。僕が満足するまで茂木くんには付き合ってもらんだから!」
凄く顔が熱い。何なんだろう。僕の中で何が起こってるんだろう。
ドリンクバーから戻ると、食事を終えた茂木くんが、ぼぉと店内を見つめてる。
「はい、ウーロン茶で良かったでしょ?」
「うん、ありがとう」
今日、初めてお礼言われた。
「スマホ貸して!」
茂木くんの隣に座って、ポケットから取り出した携帯電話は、当たり前だけどロックがかかってない。まさか、ロックの仕方知らないわけじゃないよね。今度、教えてあげよう。
「ここに受話器のボタンあるでしょ?」
ちゃんと茂木くんに画面が見える様に体を動かすと、茂木くんの体が少しずれる。なんか、やな感じ。
「それかアイコン押すと通話できるようになるから。それと……」
やっぱり茂木くんは、画面を見ながら僕から離れようとしてる。
「ちょっと、聞いてる?」
人が説明してるのに、離れるばかりで返事もしないんだから。
「痛って……」
意図してそうしたわけじゃないけど。僕の顔に驚いて、茂木くんは口の中を切ったっぽい。
「……いい気味」
僕から離れようとするから。
決めた。これからも茂木くんには僕の側にいてもらう。
「お金の受け渡しのタイミングと方法は、メッセージで指示するから、勝手に持ってきたりしないでよね」
「わかった」
お会計を済ませた後、僕が言った言葉にはっきりと頷く茂木くんが無性に腹が立つ。本当に何を考えてるのかわからない。
でも、これで茂木くんとまた話せる。一緒に居られる。
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