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第6話 不協和音

お風呂掃除をして、乾燥機に入っていた洗濯物も畳んで、お腹が鳴ったから時計を見ると八時になっていた。 バイトなら、帰ってくるのがもう少し遅くなる。遅くまで食べないで僕が待っていると、いつも悠ちゃんは嫌な顔をする。だから、先に食べる事にした。 料理をレンジで温めなおして、両手を合わせて食べ始める。箸でハンバーグを割ると、肉汁が溢れてきてとてもいい感じだ。僕は、焼き具合に満足して一人で頷き、目の前に座る悠ちゃんが、嬉しそうにハンバーグを頬張る姿を思い浮かべた。そして、そんな自分に苦笑する。 僕が料理を作り始めた頃は、いつも嬉しそうに「美味い!」と言って、食べてくれた。でも、だんだんと無口になり、目も合わせてくれなくなった。 僕が何かしたのかと焦ったけど、何も心当たりがない。悠ちゃんに聞こうともしたけど、僕が話しかけようとすると、悠ちゃんは逃げるようになった。 ーー悠ちゃん、どうして?僕達、本当の兄弟のように…、いや、それ以上に仲が良かったはずなのに…。 三年前から、いつもその疑問が僕の中で渦巻いている。 やっぱり、血の繋がらない弟なんて、鬱陶しくなったんだろうか。でも、だとしたら…。去年の、悠ちゃんが高校に進学する為に家を出る前日の夜の、あれは……? ふ、と気が付いて顔を上げる。どうやら僕は、ご飯を食べ終わった後、ソファーに座って考え事をしているうちに寝てしまったようだ。 時計の針は、十時を指していた。悠ちゃんは、まだ帰って来ない。 僕は小さく溜め息を吐くと、部屋から着替えを取って来てお風呂場へ向かった。 お風呂から上がっても、まだ悠ちゃんは帰って来ていなかった。 ーーバイトなら、九時には帰って来るはず。今日は、たぶん女の人と…。 ラップがかけられたテーブルの上の料理を見て、胸が痛くなる。僕は、毎日何度胸を痛くすればいいのだろう。 静かな家の中で一人でいると、嫌な想像をしてしまう。 僕は早々にベッドに潜り込み、頭から布団をかぶって目を閉じた。

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