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第12話 不協和音
痛み止めが切れたのか、額の傷がズキズキと痛くて目が覚めた。まだ、部屋の中は真っ暗だ。
病院からもらってきた痛み止めを飲もうと、身体を起こしてベッドから降りる。立ち上がった途端に視界がぐるりと回り、慌ててしゃがんだ。
ついでに目眩の薬も飲まなきゃ、と、ドアまで這って行き、取っ手を掴んで何とか立ち上がる。部屋を出て、壁伝いにリビングに入り、常夜灯を付ける。テーブルの上に置いてあった薬を持ってキッチンに行き、コップに水を入れて薬を飲んだ。
ふ〜っと深く息を吐いてその場に座り込む。流し台に凭れて目を閉じ、薬が効いてくるのを待った。
ーーすぐに体調が悪くなる自分が情けない。しかも怪我までして…。悠ちゃんみたいに強くなりたい。背が高くて筋肉があって、風邪を引いたり熱を出す事もない。背が低くて筋肉もなくて、貧弱で身体の弱い僕とは正反対だ。こんな僕だから、きっと悠ちゃんは嫌いになったんだ…。
自分で考えた事に悲しくなって、僕は膝を抱えて俯いた。
その時、リビングの入り口から低い声が響いてきて、僕は驚いて肩を跳ねさせる。
「玲…、そんな所で何をしてるんだ?」
常夜灯のわずかな灯の中、悠ちゃんが僕に近付いて来る。
僕はゆっくり顔を上げて悠ちゃんを見た。
「あ…、痛み止めが切れたから、薬を飲んでた。喉も渇いてたし…」
「何かあったら俺を呼べと言っただろ?傷が痛いのか?」
悠ちゃんが僕の傍にしゃがんで、顔を覗き込んできた。そして、僕の額に手を当てる。
「熱いな…。おまえ、熱もあるじゃないか。まだ、気分も悪いんだろ?無理はするなと言ったのに…。バカが…」
「…ごめんなさい…」
悠ちゃんを怒らせてしまったと思った僕は、たちまち目に涙を溜める。そんな僕を見て、悠ちゃんはふ、と笑った。
ーー悠ちゃんが笑った…。すごく久しぶりに笑ってくれた…っ。
驚いて、パチパチとさせた僕の目から、ポロリと雫が流れ落ちる。
悠ちゃんが目を細めたまま、僕の頰に手を伸ばして涙を拭ってくれる。そして、低めの心地よい声で「玲…泣くな」と囁いた。
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