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第14話 不協和音
カーテンの隙間から入る明るい光と鳥のさえずりで目が覚める。悠ちゃんが隣にいてくれたからか、ぐっすりとよく眠れた。ベッドの下を覗き込むと、悠ちゃんが、まだ寝息を立てている。
僕は静かにベッドを降りた。そっと立ち上がっても、もう目が回ることも無い。悠ちゃんを起こさないように部屋を出て、いつものように洗面所で顔を洗ってリビングに入る。キッチンに立って、朝食を作ろうと冷蔵庫を開けた所で、後ろから名前を呼ばれた。
「玲、何をしてる」
驚いてビクンと肩が跳ねる。ゆっくり振り返ると、悠ちゃんが少し怖い顔をして、すぐ後ろに立っていた。
「あ、朝ご飯…作ろうと思って…」
「今日は一日休めと言っただろ。おまえは早くベッドに戻れ。俺が作るから」
「…はい…」
悠ちゃんのいつもよりも低い声に、素直に従う。
悠ちゃんの横を通り過ぎようとした時に、ギュッと腕を掴まれた。
「玲、気分は?傷はどうだ?」
「…気分は良くなったよ。目眩もしない。熱も下がったと思う。傷は、まだ痛い…」
「そうか…。じゃあ、飯を食べたら痛み止めを飲んだ方がいいな。薬も塗り直してやるから。飯が出来たら持って行ってやるから大人しく寝てろ」
「うん…、ありがとう」
僕の腕を離してキッチンに向かう悠ちゃんの背中を、チラリと見た。心配してくれてるのか、それとも面倒だと思ってるのか。どっちなのかなんて聞けなくて、僕は部屋に戻ってベッドに寝転び、腕に残る悠ちゃんの手の感触を思い返していた。
甘い物が苦手なのに、甘い物が好きな僕の為に、悠ちゃんがフレンチトーストを作ってくれた。蜂蜜がたっぷりとかかったそれは、思わずにやけしまうほど、とても美味しい。
僕の勉強机に座って食べる悠ちゃんの顔は、まるで苦い物を食べてるみたいに眉間にシワが寄っている。ブラックコーヒーで流し込んだ後に僕を見て、「おまえ…よくこんな甘い物をパクパク食えるな…」と呆れた顔をした。
「そうかな…。すごく美味しかったっ。ごちそうさまでした」
「ん…、昼は辛い物にしよう…」
そう呟きながら食べ終わった食器をお盆に乗せて、悠ちゃんは部屋から出て行った。
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