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第16話 不協和音

僕は情けない顔を隠すように、ぺこりと頭を下げる。 「こ、こんにちはっ。買い物ですか?」 「こんにちは。そう、欲しい本があってね。玲くんも買い物?」 「はい…、晩ご飯の材料を…」 「そう。玲くん、こっち向いて?」 「あっ…」 俯いて話す僕の頰に手を当てて、顔を覗き込まれる。僕は、何度か瞼を瞬かせて、涼さんを見た。 「まつ毛が濡れてる…。何かあった?」 「いえ…、何もないです…」 「そう?悩みがあったら聞くよ?ああ、これ、倒れて怪我をした傷だね。もう大丈夫なの?」 「あ、はい。まだ少し痛むけど、大丈夫です」 「そっか。ふふっ、君が病院に運ばれたって先生から聞いた時、悠希がものすごく動揺してたよ。あいつは君のことになると、冷静でいられなくなるよね」 涼さんの言葉に、僕は首を傾げる。 「そんなこと、あるわけない…。僕は、悠ちゃんに嫌われてるから…」 「ええっ?う〜ん、そっか…。玲くんはそんな風に思ってるんだ。君達は難しいね…。ま、悠希のことで相談があればいつでも聞くからね?ところで玲くん、どこに買い物に行くの?心配だから…っていうか、悠希が心配し過ぎて怒りそうだから一緒に行くよ」 「だ、大丈夫です!涼さん、本屋に行って下さいっ」 「まあまあ、どこ?」 「…駅の側のビルの一階にあるスーパー…」 「オッケー。そこに本屋もあるから、気にしないで。じゃ、行こっか」 肩を軽く押されて歩くように促される。優しく見えて意外と強引だと思いながら、涼さんと並んで歩き出した。 駅の側のビルに着いて、僕はスーパーへ、涼さんは本屋へと別れる。後で、涼さんがスーパーに来てくれるらしい。僕は店に入りカゴを持って、何にしようかと考えながら食材を入れていった。 必要な物を入れ終わり、スイーツ商品の前で悩んでいるところへ涼さんが来た。本屋の袋を持っているから、目的の本を買えたらしい。 「ふふ、甘い物好きなの?この近くに美味しいケーキ屋があるから、そこのケーキを買ってあげるよ」 「ええっ?そんなっ、いいですよっ」 「いいのいいの。俺、見舞いにも行ってないしさ。それに、今から玲くん家にお邪魔するつもりだから、その手土産ってことで…ね?」 「はあ…、えっ?家に来るんですか?」 「うん。きっちり家まで送るよ。玲くんを一人で帰したなんて知れたら、後で俺が悠希に怒られるからね…」 にっこりと笑う綺麗な顔は意外と迫力があって、嫌とは言えなくなる。 僕は小さく頷いて、会計を済ます為にレジへ向かった。

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