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第17話 不協和音

涼さんお薦めのケーキ屋でケーキを五個も買ってもらって、他愛もない話をしながら家に帰って来た。 涼さんにリビングのソファーに座ってもらい、買って来た食材を冷蔵庫に入れる。お湯を沸かしながら、「コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」と聞く。 「紅茶がいいかな」 「わかりました」 ガラスのポットに紅茶の茶葉を入れてお湯を注ぐ。同じくガラスのカップにもお湯を注いで温めておいた。しばらくして紅茶の色が出てきたので、カップのお湯を捨てて紅茶を淹れ、ケーキ皿と一緒にお盆に乗せてソファーの前のテーブルに置いた。 「どうぞ。ケーキも好きなの選んで下さい」 「ありがとう。ケーキは玲くんの為に買ったんだから、玲くんが先に選んで。ていうか、玲くんが全部食べてもいいんだよ?」 「さ、さすがに全部は無理です…。ん…と、じゃあ、これもらってもいいですか?」 「いいよ。俺はこれにしようかな。いい?」 「ふふ、いいですよ。もしかして甘い物、好きなんですか?」 少し嬉しそうにケーキを皿に乗せる涼さんに、自然と笑みが零れる。涼さんは、はにかんで僕を見た。 「…結構好き。買ってあげるなんて言っておきながら、実は俺が食べたかったりする…」 「美味しいですもんね、甘い物。悠ちゃんなんて、すっごい渋い顔で甘い物を食べるんですよ。反応がおかしいんです」 「あ〜…、確かにあいつ、俺がチョコとか食べてるとすごい変な顔してるね…。でもさ、玲くんが作った甘い卵焼きだけは、ほんと、幸せな顔して食べてるよ?たまに俺が横から取ると、めちゃくちゃ怒るし。きっと、玲くんが作る物だけは特別なんだね」 「そ、んなことはないと思うんですけど…」 「そう?ま、あいつは天邪鬼だから。玲くんの前では、思ってる事と反対の態度を取ってるんだよ」 「……」 ーーそうなのかな?だとしたら、僕のこと、嫌いなわけじゃない? 俯いて黙り込んだ僕の頭を、涼さんが優しく撫でる。チラリと目を向けると、「ケーキ食べよっか」と微笑まれた。 涼さんと美味しいケーキを食べて話してるうちに、悠ちゃんに怒られて悲しかった気持ちが薄れて、心が軽くなってきた。でも、悠ちゃんが帰って来たら、また昼のことで怒られるのかな…、と暗くなっていると、「晩ご飯は何を作るの?」と明るい声で聞かれる。 「あ…今日は肉じゃがにしようかなと思ってるんです」 「え〜いいなぁ。俺も食べていってもいいかな?」 「僕の作った物で良ければ…。でも、期待しないで下さいよ?」 「期待するよ?だって、悠希がいつも美味いって言ってるから」 涼さんの言葉に驚いて、思わず声を上げそうになった。

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