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第18話 不協和音

嬉しくて、胸の奥からじわりと温かいものが込み上げてくる。 ーー僕には何も言ってくれないけど、美味しいって思ってくれてたんだ…。嬉しい…っ。 僕はまた気分が上向きになって、美味しい肉じゃがを作るべくキッチンに向かった。 ちょうど晩ご飯が出来上がった頃に、悠ちゃんが帰って来た。リビングで寛ぐ涼さんの姿を確認して、心底嫌そうな顔をする。 「おい…なんで涼がいるんだよ。俺がいない時に家に来るな」 「え〜っ、ひどいなぁ。買い物に出掛けたら玲くんとばったり会ってさ。怪我したばっかだし一人にしとくのも心配になって。一緒に買い物に行って、ケーキ食べてまったりしてたんだよ。玲くん誰かに怒られたのか、落ち込んでたし?」 「ちっ…」 涼さんの言葉に、悠ちゃんは舌打ちをして眉間にシワを寄せる。 「ほら、そんな顔しない。悠希はほんと、感情表現が下手だよね。それより早く手を洗って来なよ。玲くんの美味しいご飯食べるよ」 「はあ?もしかしておまえも食ってくのか?」 「そうだよ?だから悠希が帰って来るのを待ってたんじゃないか。悠希の弁当を見て、いつかは食べてみたいと思ってたんだよね〜。だからすごく楽しみ」 「り、涼さんっ、ほんとに普通ですから。期待しないで下さい…」 そんなに期待されても困る。普通だとは思うけど、きっと手馴れてる涼さんのお母さんが作った料理の方が、美味しいに決まってる。 涼さんに手伝ってもらって、テーブルにお皿を並び終えた所で、悠ちゃんが洗面所から戻って来た。 僕と悠ちゃんはいつも通りに向かいに、そしてなぜか僕の隣に涼さんが座った。 「おいおまえ…なんでそこに座ってんだよ」 「なんでって、玲くんの隣で食べたいから?まあまあ、別にいいじゃん。じゃあ、いただきまーす」 「あ、どうぞっ。い、ただきます…」 「……」 悠ちゃんは渋い顔をしたまま、そっと手を合わせて食べ始めた。 涼さんが大きな口を開けて、じゃがいもを一つ口に入れる。途端に目を大きく見開いて、僕を見た。 「れいふんっ、おいひいよ…っ。んぐっ。超俺好みの味!ねぇ、マジで俺の嫁に来ない?」 「はあっ?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ…」 「うわぁ…、この人すごく怖いんですけど。ね、玲くん。俺、本気で玲くんのこと、好きになってもいいかな?可愛いし、優しいし、その上料理も上手って最高じゃん。俺は誰かさんみたいに冷たくないし?優しく甘やかせてあげる。あ、でもやっぱり女の子の方がいいか…」 「当たり前だろうが…っ」 「あ、あの…、僕は好きになったら男とか女とか関係ないです…。でも涼さんこそ、僕なんかより可愛い女の子の方がいいですよ」 「え〜…、もしかして俺振られちゃった?玲くん、好きな人でもいるのかな?」 涼さんの質問に、心臓がドキンと跳ねる。チラリと悠ちゃんを見て、嘘をつくのが下手な僕は、小さく頷いた。

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