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第20話 不協和音

翌日の日曜日は、平日より少しだけ遅く起きた。 悠ちゃんは出掛けると言っていたから、休みの日にしては早く起きてくるだろうと、二人分の朝食を作ってテーブルに並べる。 思った通り、タイミングよく悠ちゃんが起きてきて、一緒に朝ご飯を食べた。いつものように、僕がもたもたと食べてる間に悠ちゃんは食べ終わる。でも、すぐに洗面所に行って準備をするのかと思ったら、テレビを見ながらのんびりとコーヒーを飲んでいる。 ーーもしかして、今日はどこにも行かないで家にいる? そう期待して嬉しく思っていると、テーブルに置いた悠ちゃんのスマホが鳴った。悠ちゃんがスマホを手に取り、誰かと話しながらリビングを出て行く。 チラリと見えた名前は、女の人のものだった。 僕の心が一瞬で暗くなる。 つくづく僕は、悠ちゃんの挙動に左右されるんだなぁ、と可笑しくなった。さっきまでの嬉しい気持ちが、今はもう、悲しい気持ちに覆われてしまい、すっかり食欲が無くなってしまった。 でも残った食材を捨てるのはもったいないので、お昼に食べようとラップをかける。 そこに、着替えて出掛ける準備をした悠ちゃんが戻って来た。ラップのかかった皿を見て、渋い顔をする。そして僕を見て何か言いかけたけど、フイっと目を逸らすと「出掛けてくる…」とだけ言って、出て行った。 ーーこれは、よくある光景。いつもそうやって、悠ちゃんは僕を置いて、どこかへ行ってるじゃないか。女の人の所へ行ってるじゃないか。それを、僕は黙って見送ってきたのに…。慣れっこのはずなのに…。なのになんで、今更涙が出るの?我慢出来ないの? 悠ちゃんが出て行ったリビングのドアを見つめて、僕は静かにポタポタと涙を流していた。だけど、とうとう我慢出来なくなり、顔を両手で覆って座り込み、声を上げて泣き出した。 ーーおとといから悠ちゃんが僕に触れて、時折り優しくしてくれるから、僕の心が弱くなってしまった。もっと、と欲が出てきてしまった。僕は今までどうやって耐えていたんだろう…。 「ふぅ…っ、ゆ、悠ちゃん…、どこにも行かないで…。僕を置いて行かないでよ…。僕は、悠ちゃんだけなのに…。悠ちゃんが傍にいてくれれば、それでいいのにっ。ひぅっ、ほ、他の人の所へ行くの…っ、嫌だっ。傍にいてよ…っ」 堪えきれずに苦しい思いを叫ぶ。でも、気持ちを吐き出せば吐き出すほど悲しくなってきて、涙がどんどん溢れてくる。 どれくらいの時間そうしていたのか、僕は最後には泣き疲れて、そのままリビングの床で眠ってしまった。

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